入居前はどのような状況でしたか?
義父は入居当時91歳、要介護2の認定を受けていました。もともと血圧が高いこと以外は特に悪いところもなく元気な人でしたが、年齢とともに少しずつ身体が思うように動かなくなっていきました。
一番の問題は、住まいでした。義父はエレベーターのない団地の5階で一人暮らしをしていたのです。階段の上り下りが難しくなってからは、買い物に行くことも、デイサービスのお迎え場所まで降りることもできず、部屋から一歩も出られない状態になってしまいました。通院の際も、私がなんとか階段を付き添っていましたが、それも限界に近づいていました。
義父の母が亡くなってからずっと一人暮らしで、男手ひとつでは身の回りのこともままならない様子でした。いずれはどこかの施設にお世話になるか、在宅サービスを利用するか、と考え始めたのはその頃からです。
正直なところ、私の家に引き取るという選択肢にはためらいがありました。うちの家はもともと私の両親が建てた家ですし、自分の親ではない義父を住まわせることに、どこか割り切れない気持ちがあったのです。それに、介護をするのは私一人。その負担を考えると、とても在宅でみていく自信はありませんでした。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
本格的に施設探しを始めたのは、義父が団地の階段を自力で上り下りできなくなったことが直接のきっかけです。部屋から出られないということは、社会とのつながりが断たれてしまうということ。このままではいけない、「もうここには置いとけない」という気持ちが強くなりました。
実は、義父の母が亡くなった10年ほど前から、いずれは、と漠然と施設を探し始めてはいました。最初は要支援だったのでなかなか入れる施設が見つからず、本格的に探し始めたのは要介護2の認定を受けてからです。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、いくつかの施設をリストアップし、見学に足を運ぶようになりました。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
介護を担えるのが自分しかいない状況で、自分の親でもない義父を、自分の親が建てた家に迎えることへの抵抗感は拭えませんでした。もちろん、義父のことは大切に思っていましたが、それとこれとは別の感情でした。在宅介護ではなく施設入居という選択肢を考えたとき、ずっと心の中にあったのはこの正直な気持ちです。この葛藤があったからこそ、義父が安心して穏やかに暮らせる場所を外に探そうと、心を決めることができたのだと思います。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
いくつかの施設を見学する中で一番気になったのは、スタッフの方の人数でした。どの施設も人手不足だとは聞いていましたが、実際に見学に行くと「スタッフさんはどこにいらっしゃるんだろう」と感じるほど、人の気配がしない施設も多かったです。そうなると、夜間の体制や入浴介助の時など、本当に手厚いケアをしていただけるのだろうかと不安になりました。
最終的に入居を決めたこの施設は、見学した中では一番スタッフの方がよく動いていらっしゃって活気があるように感じましたが、それでも「実際に入居したらどうなのだろう」という一抹の不安はありました。