入居前はどのような状況でしたか?
入居したのは、当時74歳だった母です。診断を受けていた病気はALS(筋萎縮性側索硬化症)で、介護認定は最も重い要介護5でした。認知症の症状もあり、特に被害妄想のような言動が見られるようになっていました。ただ、専門的な治療が必要なほどではなく、前頭葉の機能が少し低下しているのかな、と感じる程度でした。
身体的には、実用的な歩行は難しい状態でしたが、それでも歩こうとしてしまうため、常に誰かの見守りが必要な状況でした。入居前は自宅で一人暮らしをしていたのですが、だんだんと人の手を借りなければ生活が成り立たなくなっていきました。しかし母は、人を家に上げることを極端に嫌がり、独りでいることを望むようになっていたのです。私たち家族としては、「もう自宅で支えるのは無理かもしれない」と限界を感じていました。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
施設探しを考え始めたのは、入居する年の夏、7月頃でした。母は独居を望みながらも、実際には誰かの助けなしでは生活できないという矛盾した状況にあり、私たち家族もどうすれば良いか分からなくなっていたのです。そこで、まずはショートステイ(レスパイト入院)を利用してみることにしました。
母自身は施設に入ることに強い抵抗感を示していたため、すぐには話が進みませんでした。そこで、親族総出で話し合い、「お母さんのためには、施設にお願いするのが一番良い選択なんだ」と、根気強く説得を続けました。本人を連れて行くのは最後の段階にして、まずは私たち家族だけで3ヶ所ほどの施設を見学して回りました。その中で最終的に決めたのが、こちらの施設でした。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
母がようやく「施設に入ることも考えなくはない」と言ってくれたのは、入居する直前の秋、10月頃だったと記憶しています。本音を言えば、母は最後まで自分の家で過ごしたかったのだと思います。「家に帰りたい」が口癖で、「本当は家で死にたかった人」でした。その願いを叶えてあげられなかったことへの申し訳ない気持ちは、今でも胸の中にあります。施設への入居は、母のためであると同時に、私たち家族にとって苦渋の決断でもありました。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
見学に訪れた際、他の入居者の方々があまり共有スペースに出ていらっしゃらず、お部屋で過ごされている方が多い印象を受けました。ナーシングホームという特性上、医療的なケアが必要な方が多いのだろうと理解はしていましたが、「皆さんと交流したり、ベッドから離れたりする時間はどれくらいあるのだろう」「日々の生活を大切にしてもらえるだろうか」という点は、少し気になりました。
ただ、見学の際に案内してくださったスタッフの方がとてもしっかりとした方で、丁寧に説明してくださったので、そこまで大きな不安には繋がりませんでした。