ご長寿くらぶ船橋・金杉
に80歳・女性・要介護3で入居中の方へのインタビュー

母はパーキンソン病を患っており、私たち夫婦と一緒に暮らしていました。在宅でみていたのですが、ある日、自宅のお風呂で体が動かなくなってしまったんです。なんていうか、突っ張り棒みたいにカチンって体が固まってしまって…。それで、怖くてもう入浴をさせられなくなってしまいました。 デイサービスから帰ってきて、私たちが仕事から帰るまでの間、母が一人になる時間もあって、転倒もしょっちゅうでした。その危険性も怖かったですし、やっぱり私たちも疲れてしまって…。母もわがままを言ったりして、特に主人がもう全然ダメで。母との間で揉め事がすごく多くなって、「もうとてもじゃないけど見れない」という感じになってしまいました。

施設を探し始めたものの、罪悪感は、かなりありましたね。 世の中には、寝たきりの方を介護されている方とか、もっと頑張っている方がたくさんいらっしゃるじゃないですか。それなのに、母はまだ自分で歩ける。そんな母を施設に入れてしまうことに、「自分はまだ甘いんじゃないか」って思ってしまったんですよね。「もっとやれることがあったんじゃないか」と、自分を責める気持ちが強かったです。 ただ、当時は家での喧嘩が毎日のようだったので、母の方から「こんな家、出ていきたい」と言われるほどでした。その言葉が、かえって私の背中を押した部分もあったかもしれません。

入居後、私たちの家庭内は、もう全然平和になりましたね。主人も早く帰ってくるようになりましたし、一番ホッとしたのは主人だと思います。逆の立場だったら、私もやっぱり義理のお母さんを見るのはすごく大変だったと思うので…。夫婦二人とも、気持ちが本当に、もう全然楽になりました。だから今は、備品の補充も兼ねて2〜3週間に1回くらいのペースで会いに行っています。あまり頻繁に会うと、また喧嘩になっちゃうので。 母にも良い変化がありました。施設でお友達ができたようで、お昼はお部屋に遊びに来てもらっておしゃべりしているみたいです。この間の介護認定の面談で「今、何が一番楽しいですか？」と聞かれた時も、「お友達とのおしゃべりです」と答えていて。それを聞いて、本当に嬉しかったです。 他にも、週に1回パン屋さんが来てくれたり、美容師さんが来て散髪をしてくれたりもします。母はパンが好きなので、それをすごく楽しみにしているみたいです。 ただ、母から文句を言われることもあります。生活保護を利用しているのでテレビを買ってあげられなくて、「テレビがない」と。ラジオはあるんですけど、母はラジオを聴かない人なので…。あとは、「帰りたい」とは言わないんですけど、「ここじゃないところに帰る」と言ったり。どこに帰るの？って感じですけどね。

施設探しは、ほとんど私一人で決めました。見学したのは、今入居しているこの施設だけです。 見学に行った時、不安は全くありませんでした。というのも、「パーキンソン病に特化した施設」という触れ込みだったんです。しかも、できたばかりの新しい施設で何もかもが新品でした。担当の方もとても親切でしたし、家から近かったこともあり、他に比較することなく、もうここにしようとすぐに決めました。

スタッフの皆さんは、本当に優しくしてくださいます。特に、今いらっしゃる日勤の看護師さんがすごく良い方で、安心して任せられる感じです。母は以前、血圧が安定しなくて、デイサービスから「血圧がすごい高いです、大至急帰ってきてください」みたいな呼び出しが何回かあって、そのたびに会社を早退したりしていたんです。でも、施設に入ってからは看護師さんがしっかり見てくださるので、そういったことが全くなくなりました。安心して仕事に集中できるようになったのは、本当に大きいです。外部の主治医との医療連携もしっかりしてくださるので、とても信頼しています。

設備面、特に良かったのがお風呂です。最新式の、洗車機みたいに座ったまま体を洗ってもらえる機械浴があって。入居のきっかけが自宅でのお風呂の出来事だったので、浴槽をまたいだりする心配なく安全に入浴できるのは、本当にありがたいです。母も楽なようですし、何より安心してお任せできます。

何よりも、新設の施設なので建物全体がとても綺麗で清潔感があるのが良いですね。母たちの代が最初の入居者だったので、何もかもが新品で、気持ちよく生活をスタートできたと思います。また、家から近いというのも、実際に生活してみると大きな利点でした。月に一度の通院の付き添いや、おむつなどの備品を届けに行くのもスムーズですし、何かあってもすぐに駆けつけられるという安心感があります。

一番切なかったのは、母の趣味の編み物ができなくなってしまったことです。安全上の理由で、編み棒を持ち込むことができなくて。ハサミやカッターもダメなので、細かい手芸もできません。本人も「時間が潰せない」と言っていますし、生きがいを少し奪ってしまったようで、本当に辛かったです。ただ、色鉛筆だけはなんとか許してもらえて、塗り絵をしたりしています。 それから、「パーキンソン病に特化」と聞いていたのに、しばらくして施設の方針が変わり、提携のお医者さんも内科の先生に代わってしまったんです。そして今年の1月、突然「ここではパーキンソン病は見られないので、系列の別の施設に移ってもらえませんか」と転居を打診されて。本当に、私にとっては寝耳に水だったので、すごく困ってしまって…。 突然のことでどうしていいか分からなくなり、一時はもう行き場がなくなる、みたいな感じで、精神的にもういっぱいいっぱいになってしまって、仕事を少し休んでいたんです。結局、話が二転三転して、私が外部の病院に連れて行くなら今の施設にいられることになったのですが、「えー、なんだったんだろう」って今でも思いますけどね。

スタッフさんの入れ替わりが、少し激しいところでしょうか。入居当時にお世話になった方は、もうほとんどいらっしゃいません。「こんなに人って入れ替わるものなの？」って思ったことはあります。もちろん、新しく来てくださった方も良い方なので、気にはならないんですけどね。 食事についても、母は少し不満があるようです。施設内で調理するのではなく、仕出し弁当のような形式なので、少し物足りなく感じるみたいで…。実際、少し痩せました。膝が悪いので太っているよりは良いのかもしれませんが、少し気になるところです。

在宅介護の限界、そして施設入居後の想定外の方針変更。インタビューでは、その一つひとつを乗り越えてこられた娘さんの、静かな強さを感じました。「罪悪感でいっぱいだった」という言葉とは裏腹に、お母様を想うからこその決断であり、その後のトラブルにも必死で向き合われたのだと思います。家庭内に平和が戻り、「気持ちが楽になった」と語る声は、同じように介護で悩む多くの方の心を、きっと軽くしてくれるはずです。