入居前はどのような状況でしたか?
父は75歳で、入居する直前までごく普通の生活を送っていました。もともと前立腺癌を患ってはいましたが、抗がん剤治療などを受けながら、母と二人で自宅で暮らし、車の運転もしていました。私自身は都内で一人暮らしをしており、まさか父が急に介護が必要な状態になるとは夢にも思っていませんでした。施設にお世話になることなど、家族の誰もが全く考えていなかったのです。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
きっかけは本当に突然のことでした。ある日、父が急に「歩けない」と言い出し、大学病院に入院することになったのです。検査の結果、癌の骨転移が原因だと分かりました。しかし、病院ではこれ以上できる治療はないと告げられ、主治医の先生から「ご自宅に連れて帰るか、施設を探すか」という選択を迫られました。
父はもう自力で歩くことはできず、母も持病を抱えていたため、自宅で介護をするのは現実的ではありませんでした。その瞬間から、私たちの慌ただしい施設探しが始まりました。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
父が入院してから、私は毎週末に実家へ帰り、母と一緒に施設見学に奔走しました。1日に3件も4件も回るような日で、正直なところ、精神的にはかなり追い詰められていました。「もうほんと、なんか泣きそうになりましたね。泣いてる暇はないんですけど」と、自分に言い聞かせるのが精一杯でした。
特養はどこも何百人待ちと言われ、民間の施設は経済的に継続が難しい金額で……。先の見えない不安の中で、ただただ必死に父の居場所を探していました。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
たくさんの施設を見学する中で、一番の不安はやはり費用のことでした。父の年金で賄える範囲でないと、長期的な入居は難しい。しかし、多くの施設がその予算を大きく超えていて、途方に暮れかけていました。
最終的に母がこちらの施設を見学したのですが、その際もやはり費用面が一番の懸念点でした。私たちの希望する条件で受け入れてもらえるだろうか、という不安は大きかったと思います。