入居前はどのような状況でしたか?
母は91歳で、入居する直前まで一人で暮らしていました。歩行器を使えば自分で買い物にも行けるほどで、身の回りのことはほとんど自立してこなしていました。要介護認定は2でしたが、実質的には3に近い状態だったと思います。認知症は中程度で、最近の出来事を忘れて同じことを繰り返し尋ねることはありましたが、自分の名前や生年月日ははっきりと言える、しっかりした一面も持っていました。
私には、以前に父を介護した際、施設に入ったことで急速に心身が弱ってしまったという経験がありました。そのため、母にはできる限り自分の力で生活する時間を長く持ってほしいと、強く願っていました。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
本格的に施設探しを考え始めたのは、母の転倒が増えてきたことがきっかけでした。まずは施設での生活に慣れるための練習として、2週間ほどショートステイを利用することにしたのです。ところが、その間に容体が急変し、医師から末期がんであるという診断を受けました。本当に突然のことで、頭が真っ白になりました。
それまでは一般的な介護施設を探すつもりでしたが、診断を受けてからは急遽、終末期ケアに対応してくれるホスピスを探さなければならなくなりました。時間的な猶予も精神的な余裕もない中で、以前ケアマネジャーさんから聞いていた自宅の目の前にあるこの施設に、藁にもすがる思いで見学に伺いました。幸いにもすぐに入居できるとのことで、その場で決断するに至りました。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
末期がんの診断から施設探し、そして入居決定まで、あまりにも目まぐるしく、正直なところ心の準備が全く追いついていませんでした。私たち家族にとって「ホスピス」という言葉はまだ現実感がなく、ついこの間まで一人で暮らしていた母を、終の棲家となるかもしれない場所へ入れるという決断は、非常に重いものでした。
ゆっくりと本人に合った場所を探してあげたいという思いとは裏腹に、時間がないという状況に追い立てられ、とにかく必死だったことを覚えています。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
見学の際に最も不安だったのは、父の介護で経験したトラウマでした。父は施設に入ってから、安全を優先されるあまり活動が制限され、あっという間に寝たきりになってしまったのです。母も同じように、まだ自分でできることまで過剰な介護をされ、気力や体力を失ってしまうのではないかと心配でした。
例えば、トイレです。本人が「自分で行きたい」と思っているうちは、たとえスタッフの方の手間が増えたとしても、できる限り本人の意思を尊重してほしい。安易にオムツに切り替えたりせず、どこまで自立を支援してくれるのだろうか、という点が一番気がかりでした。