家族の家ひまわり氏家
に81歳・女性・要介護2で入居中の方へのインタビュー

両親は神奈川の賃貸マンションで二人暮らしでしたが、二人とも認知症が進行し、生活がほとんど破綻している状態でした。私は栃木に住んでいるため、神奈川の実家と栃木を往復する遠距離介護を続けていました。特に母は介護拒否が強く、私も心身ともに限界を感じていました。

本格的に施設探しを始めたのは、母が緊急手術で入院したことがきっかけです。入院を機に母の認知症はさらに進み、このまま自宅に帰すのは難しい状況でした。療養型の病院へ転院したタイミングで、そこから直接移れる施設を探し始めました。 同時に、一人で家に残された父の施設も探していました。父も一人で生活できる状態ではなく、ショートステイ先で不穏になってしまうこともあり、私自身も仕事と遠距離介護の両立が難しくなっていたため、夫婦二人で手分けして両親の施設を探すことにしたんです。 母は家では手がつけられないほど強烈な性格だったため、施設入居は絶対に拒否するだろうと思っていました。しかし、入院生活と環境の変化で母自身が混乱していたこともあり、なかば「わけがわからないまま移動させた」というのが正直なところです。

母を施設にお願いすることに対して、正直なところ罪悪感は全くありませんでした。というのも、当時の状況は「私が倒れるか、両親に何かあるか」という瀬戸際で、私が倒れてしまったら他に誰も面倒を見る人がいないという恐怖が常にあったからです。何よりもまず、両親が安全な場所で暮らせるようにすることが最優先だと考えていました。

見学に伺った際、不安や気になる点は全くありませんでした。むしろ逆で、施設の中の様子や働いているスタッフの方々の雰囲気を見て、「ここがいい」と直感的に思えたほどです。他の施設も見学しましたが、ここまで良い印象を持ったのはここだけでした。

入居後の母の変化は、まさに奇跡としか言いようがありません。家では独裁者のように攻撃的だった母が、信じられないくらい穏やかな表情で暮らしているんです。先日、荷物を届けに行った際、スタッフの方が気を利かせて母を連れてきてくれたのですが、その時の穏やかな顔つきを見て心から安心しました。スタッフの方は母が心地よく感じるような相槌を打ち、自然に笑わせてくれていて、「いつもこうやって接してくださっているんだな」と、そのプロの技に感銘を受けました。 母はもともと人と話すのが好きな人なので、日中は大広間で他の入居者さんとおしゃべりをして過ごしているようです。その空間はいつも和やかで、新しい人が来てもすぐに輪に入れるような温かい雰囲気があります。家では満たされなかった「誰かと話したい」という気持ちが、ここでは満たされているのだと思います。

見学時に抱いた良い印象は、入居後も変わることはありませんでした。入居当日、母は興奮して啖呵を切るような場面もありましたが、スタッフの方々が本当にお上手になだめてくださって。その様子を見て、見学時に感じた「ここなら大丈夫」という直感が確信に変わりました。

この施設を選んで一番良かったと感じるのは、スタッフの方々の専門性の高さです。入居当日、慣れない環境に興奮した母が啖呵を切った時も、慌てることなく、本当にお上手になだめてくださいました。その対応力を見て、安心してお任せできると確信しました。 また、私と母との間には少し複雑な関係があったのですが、スタッフの方はそれを察してくださったのか、私が荷物を届けに行った際に、とても自然な形で母との対面をセッティングしてくれました。母の隣で楽しそうに相槌を打ち、場を和ませてくれる姿を見て、日頃から入居者一人ひとりの心に寄り添ったケアをされているのだと伝わってきました。攻撃的だった母が穏やかになったのも、このスタッフの方々の力があってこそだと思います。

見学の際に心を惹かれたのが、施設の「明るさ」です。これまでいくつかの施設を見学しましたが、共有スペースや居室が少し暗い印象の場所が多かったんです。しかし、ここは共有スペースはもちろん、個々の部屋まで明るい光が入る設計になっていて、とても居心地が良さそうだと感じました。 また、居室と共有スペースの配置も絶妙で、プライベートは確保しつつも、スタッフの方の目が届きやすい造りになっています。「これなら放置される心配もなさそうだな」と、見学時に安心感を覚えました。特に認知症のある方にとっては、こうした常に人の気配を感じられる環境は、とても大切なのではないでしょうか。

日中のほとんどを過ごすことになる共有スペースの雰囲気が、とても温かくて和やかな点も、この施設の大きな魅力です。入居者の皆さんが楽しそうにおしゃべりをしていて、活気があります。母を初めてそこに連れて行った時も、すぐに周りの方々と打ち解けて話し始めたのを見て、ここなら大丈夫だと感じました。 母はもともと人と話すのが好きな性格だったので、自宅で二人きりでいるよりも、ここで気の合う仲間とおしゃべりをしている方がずっと幸せなのだと思います。他の施設では、皆さんが静かにテレビを見ているだけ、という光景も目にしましたが、ここはいつも誰かの話し声や笑い声が聞こえてくるような、明るい雰囲気に満ちています。

全体的にとても満足していますが、正直なところ、気になる点が二つあります。 一つは、料金の値上げです。入居して数ヶ月後に月額で1万4000円ほど料金が上がりました。もちろん物価高の影響などもあるのでしょうが、少し上げ幅が大きいかなと感じたのは事実です。ただ、提供していただいているサービス内容を考えると、元の価格が安すぎたのかもしれないとも思っており、納得はしています。 もう一つは、もう少し外に出る機会があれば嬉しいな、という点です。例えば、近所の公園へ散歩に行くような時間が日常的にあれば、母にとっても良い気分転換になるのではないかと感じます。もちろん、安全管理など大変なのは重々承知の上での、ささやかな希望です。

遠距離介護、そしてご両親が同時に認知症を患うという大変なご状況の中、お一人で懸命に向き合ってこられた様子がひしひしと伝わってきました。「自分が倒れたらどうなるかという恐怖でいっぱいだった」というお言葉に、介護を一身に背負う方の切実な思いを感じます。 長年確執があったというお母様が、施設で穏やかに暮らしているご様子を「奇跡みたい」と嬉しそうにお話しされるご様子が、とても印象的でした。現場で働くスタッフさんの高い対応力や温かい雰囲気への感謝とともに、長く利用しているからこそ気づいた運営面での率直なご意見も伺うことができました。こうした「良い面」と「気になる面」の両方が等身大の言葉で語られた体験談は、似たような悩みを持つご家族にとって、「自分たちの場合はどうだろう？」と具体的にイメージするための心強いヒントになるのではないでしょうか。