他に選択肢がなかった緊急避難先
先ほどもお話ししましたが、クルーヴなみはやさんに入居を決めた一番の理由は、他にすぐに入れる選択肢がほとんどなかったからです。父が糖尿病で入院し、その後の療養のために一時的に入所した老健から、わずか1ヶ月ほどで「うちでは対応が難しいので退所してください」と告げられました。父は、老健が目的とする「在宅復帰」や「社会復帰」を目指せる状態ではなかったのです。
家に戻って私たちが介護することも、インスリン注射などの医療的ケアが必要になった父にとっては現実的ではありませんでした。「家にも帰れない、老健にもいられない、一体どうすれば…」と、本当に途方に暮れました。そんな八方塞がりの状況で、老健さんから「クルーヴなみはやさんなら、ベッドに空きがあってすぐに入れますよ」と紹介されたのです。
ですから、いくつかの施設をじっくりと比較検討して選んだというよりは、まさに「緊急避難先」として、藁にもすがる思いで入居を決めた、というのが実情です。あの時は、とにかく父が安心して過ごせる場所を一日も早く確保しなければならない、という焦りでいっぱいでした。
経済的な負担を抑えられた点
介護には本当にお金がかかります。父の施設費用は、父自身の貯金から捻出していますが、母は毎月の支出額をいつも心配しています。特養の待機も考えましたが、すぐに入れる保証はありませんし、民間の施設となると、やはり費用は高額になりがちです。
クルーヴなみはやさんを紹介された際、料金体系についても説明を受けましたが、以前私たちが見聞きしていた他のいくつかの有料老人ホームと比較すると、比較的安価な設定でした。もちろん、料金が安いということは、それなりの理由があるのかもしれないという懸念はありました。実際に、入居してみて衛生面などで気になる点が出てきたわけですが…。
それでも、限られた予算の中で父の介護を継続していくためには、経済的な負担を少しでも抑える必要がありました。もし、もっと高額な施設を選んでいたら、貯金が底をつくのが早まり、母の不安はさらに大きくなっていたと思います。そういった意味では、クルーヴなみはやさんの料金設定は、当時の私たちにとっては非常に重要な選択基準の一つだったと言えます。経済的な理由で選択肢が限られてしまうというのは、多くの方が直面する介護の現実なのではないでしょうか。
父の性格を考えた環境維持の必要性
入居からしばらくして、父の要介護度が4に上がった時期がありました。その時は、改めて特別養護老人ホーム(特養)への入所も検討し、実際に見学にも行きました。しかし、最終的にはクルーヴなみはやさんに留まることを選びました。その最大の理由は、父の性格と状態を考えた結果です。
父は、昔から環境の変化に対して非常に敏感なところがありました。例えば、入院したり、デイサービスを試しに利用したりした時など、慣れない場所に行くと興奮してしまったり、落ち着きがなくなってしまったりすることがよくあったのです。認知症の症状が見られるようになってからは、その傾向がさらに強まったように感じます。
特養の施設自体は悪くなかったのですが、新しい環境に父が馴染めるだろうか、かえって混乱させてしまい、精神的に大きなストレスを与えてしまうのではないか、という心配が拭えませんでした。母も「今さら環境を変えるのは、お父さんが可哀想だ」と強く言っていました。
クルーヴなみはやさんには、衛生面やスタッフの対応など、改善してほしい点が全くないわけではありません。
しかし、父はもう2年以上ここで生活しており、彼なりにこの場所や日々のルーティンに慣れている部分もあるのだと思います。今、無理に環境を変えることで父が不安定になってしまうリスクを考えると、多少の不満には目をつぶり、今の環境を維持する方が父にとっては良いのではないか、というのが私たち家族の結論でした。父の穏やかな生活を第一に考えた結果の選択です。