入居前はどのような状況でしたか?
父が施設にお世話になり始めたのは、79歳の時でした。要介護3の認定を受け、少し認知症も進んでおり、私の母のことしか分からないような状態でした。普段の移動は杖や歩行器を使っていましたが、性格は昔ながらの、いわゆる「昭和の頑固者」です。
実は、本格的に入居先を探す2年ほど前から、いくつかの施設でデイサービスなどを試していました。しかし、父は「俺はこんなとこ痛くない!早く家帰る!」と大暴れしてしまい、施設の方から「うちでは受け入れられません」と断られてしまうことが何度かありました。正直なところ、「こんな親父を受け入れてくれる施設なんて、あるのだろうか」と、途方に暮れるような気持ちでいました。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
本格的に施設探しを始めなければならなくなった直接のきっかけは、母の病気でした。母が肺がんと脳腫瘍を患い、入院して治療に専念することになったのです。そうなると、認知症のある父を一人で家に残しておくことはできません。以前からぼんやりと考えていた施設入居が、いよいよ現実的な選択肢として目の前に迫ってきた、という状況でした。
過去に他の施設で断られた経験があったため、父が馴染める場所を見つけるのは簡単ではないと覚悟していましたが、母の治療のためにも、父が安心して暮らせる場所を早急に見つける必要がありました。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
入居に対する罪悪感というよりは、父を受け入れてくれる場所が見つからないことへの焦りと、父に対する申し訳なさのようなものが入り混じった、複雑な心境でした。他の施設で大暴れしてしまった時のことは、今思い出しても少し恥ずかしい気持ちになります。そんな父でしたから、無理やり施設に入れること自体が可哀想だという気持ちもありました。
しかし、今回お世話になった施設を見学した時、父が「いや、ここええわ」と、すんなり気に入ってくれたんです。その一言を聞いた時、ずっと心の中にあった重荷がすっと軽くなるのを感じました。ようやく父が心穏やかに過ごせる場所が見つかったと、心から安堵した瞬間でした。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
見学の際、施設の建物やスタッフさんの対応に、特に不安を感じることはありませんでした。むしろ、私たちの不安はただ一点、「父がここを気に入ってくれるか、そして受け入れてもらえるか」という点に尽きました。過去に断られた経験が頭をよぎり、「また同じことになったらどうしよう」と、こちらが緊張していたほどです。