福寿さがみ南下溝
に81歳・男性・要介護2で入居中の方へのインタビュー

母が亡くなってから、父はエレベーターのない集合住宅の4階で一人暮らしをしていました。歩くことはできたのですが、だんだん物忘れも始まってきていて。それに、4階までの階段の上り下りが大変になったのか、「買い物に行けない」「外出するのが嫌になった」と言うことが増えてきました。ひどい時にはお風呂にも入らないようになってしまい、衛生面も心配な状態でした。

私と父の家は、片道2時間も離れていました。妹も私もまだ小さい子どもを抱えていて、なかなか目が離せません。そんな状況なのに、包括支援センターから呼び出しがあれば、往復4時間かけて駆けつけなければなりませんでした。 年末には「買い物に行けないから」と大晦日に呼び出されたり…。だんだんとこちらの生活がしんどくなってきて、「もうこれ以上は無理だ」と感じたのが、施設探しを考え始めた直接のきっかけです。正直、父本人よりも、私たち家族の方が疲れ果ててしまっているような状態でした。

父に施設の話をすると、最初は「行きたくない」の一点張りで、結構逃げ回っていましたね。長年住んだ家を離れたくない気持ちはわかるのですが、私たちも限界でした。 このままでは親子共倒れになってしまうと思い、私や妹だけでなく、周りの人にも協力してもらって「入ってほしい」と説得を続けました。父の安全や健康、そして私たちの生活全体を考えると、施設に入ってもらうのが最善だと判断するしかありませんでした。

あれほど嫌がっていた父ですが、入居してからの生活にはすごく満足してるみたいです。「温かいご飯が毎日食べられるし、お風呂も入れる。掃除もしてもらえるし」と話しています。以前は「ご飯を買いに行けない」とか、突発的な連絡に私たちが振り回されていたのですが、そういった緊急以外の呼び出しがなくなったのは、本当にありがたいです。 日中は、部屋にこもっているわけではなく、他の入居者の方が集まる場所で、いろんなことを話す機会があるのが本人は楽しいみたいですね。毎日、体を動かすレクリエーションのようなこともやっているらしく、強制ではないので一人でいたい時は部屋にいられるのですが、父は「みんなで行って体を動かす方が楽しい」と言っています。 なかなか一人で外に出ることはできないので、本人は「たまには外に行きたい」とも言っていますが、施設での楽しみがあることで、気持ちも紛れているようです。

施設を探す上で一番の条件は、とにかく「予算」でした。父の年金くらいで収まるところを探していて、今の施設グループが金銭的に一番合っていたんです。 そのグループの施設を2ヶ所見学して、今の場所に決めました。一番の決め手は、私の家から車で20分という距離です。何かあってもすぐ駆けつけられるし、往復4時間かかっていた頃と比べれば、精神的にすごく楽になりました。 部屋は一番安いタイプだったので、そこまで広くはありません。でも本人は「別に満足してる」という感じで、私たちも「それならいいかな」と。タイミングよくその部屋に空きが出たのも大きかったですね。「これを逃すと、またいつ入れるかわからない」と思い、急いで入居を決めました。

この施設のありがたいところは、こちらの要望に柔軟に対応してくれることです。「これはこうしてほしい」と言えば、大抵のことは聞いてもらえます。急に「今からこういうものを届けたい」と連絡しても、すぐに対応していただけるのは本当に助かっています。面会についても、こちらの都合を伝えれば、その時間に合わせて会えるように調整してくれます。お互いの都合のいい時間を見つけて荷物を届けたりしているので、まだゆっくり会えたのは1、2回ですが、そういった柔軟な対応はとてもありがたいです。入居当初の頻繁な連絡についても、こちらの状況を伝えたらすぐに改善してくれましたし、家族の声に耳を傾けてくれる施設だと感じています。

父は高血圧などの持病があるのですが、その健康管理をほとんどお任せできるのも、この施設にして良かった点です。基本的には、内科や歯科の先生が施設まで来てくれる「応診」があるので、私たちが病院に連れて行く必要がありません。月に2回くらい診察してくださり、薬の処方なども全部先生が対応してくれます。緊急の時も来てくれるみたいなので、その面も安心かなと。もちろん、緊急性のない整形外科の通院など、専門的なものは私たちが連れて行くか、追加料金で施設にお願いすることになりますが、今のところ連れて行ったのは1回だけです。日常的な通院の負担がほとんどないのは、本当に大きいです。

何よりも、父本人が今の生活に満足してくれているのが一番です。入居する前は「俺は大丈夫だ」と言っていたのに、今では「温かいご飯が食べられて、お風呂に入れて、掃除もしてもらえて、すごい満足」と話しています。私たち家族も、以前のように「ご飯がない」といった突発的な連絡に振り回されることがなくなり、精神的に本当に楽になりました。日中はレクリエーションで体を動かす楽しみもあるようで、一人暮らしでは難しかった「安心で質の高い日常生活」を送れていることが、私たちにとっても一番の喜びです。

入居したての頃は、本当に頻繁に電話が来たのが大変でした。「テレビの位置が…」とか、正直「それぐらいはそっちでやってもらって大丈夫です」と言いたくなるような細かいことでの連絡も多くて。 でも、そのことを施設の方に伝えたら、きちんと対応してくれて、その後は本当に必要な時だけの連絡になりました。生活していくうちに施設側も父のことに慣れてきて、うまく対応してくれるようになったんだと思います。最初は少し戸惑いましたが、言えば改善してくれるんだな、と感じました。

「父は元気なのに、こっちの方が結構疲れちゃってる感じになっちゃって。」インタビュー中、娘様がぽつりと漏らしたこの言葉に、当時の切実な状況が凝縮されているように感じました。片道2時間という物理的な距離、ご自身の子育てとの両立、そして先の見えない不安。遠距離介護のリアルなご苦労がひしひしと伝わってきました。現実的な「予算」と「距離」を最優先に施設を選び、結果としてお父様ご本人も「すごい満足みたい」と語る生活を手に入れ、ご家族の負担も軽減されるという、理想的な形を実現されたケースだと思います。介護に悩む多くのご家族にとって、最適な選択肢を見つけるためのヒントを与えてくれる、貴重なお話でした。