「介護で働けない……」「仕事との両立ができない」「経済的に不安……」そんな悩みを持つ方も少なくないかと思います。人生100年時代、自分達は大丈夫と思っていても何が起こるかわかりません。介護離職や介護破産も身近な問題となってきています。
この記事では、介護で働けない方向けに補助金の情報をまとめています。介護者が受け取れる補助金、在宅で利用できる補助金、老人ホームで利用できる補助金など、さまざまな観点で補助金を紹介します不安の軽減につながるサポート内容もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
介護で働けないときに役立つ補助金「介護休業給付」
介護と仕事の両立は簡単ではありません。やむをえず、仕事を休む場合もあるでしょう。そのようなときに、給付される補助金が「介護休業給付」です。育児休業給付や傷病手当金のように、働けない期間の収入を補償してくれます。
とてもありがたい給付金ですが、もらうには条件があります。具体的な支給要件や金額、申請方法について解説していきます。
支給要件
介護休業給付の給付を受けるためには、以下の要件をクリアする必要があります。
- 雇用保険の被保険者である
- 介護休業を開始する前の2年間に、賃金支払いの対象となる日が11日以上の月が12ヶ月以上ある
- 家族の常時介護のため2週間以上の休業が必要
- 介護が必要な方が配偶者(事実婚を含む)、父母(養父母を含む)、子(養子を含む)、配偶者の父母(養父母を含む)、祖父母、兄弟姉妹、孫のいずれかに該当する
- 有期雇用者の場合は上記に加え、1休業開始日から93日を経過したあと、6か月以内の契約満了が決まっていない
- 介護休業中に10日以上就労していない
- 職場復帰を前提としている
この要件に当てはまる方に対して、93日まで3回に限り支給されます。
支給金額
給付額は「賃金日額×支給日数×67%」で計算されます。以下、厚生労働省より発表されている月額金額の目安です。
賃金 | 支給額 |
---|---|
月額15万円程度 | 約10万円 |
月額20万円程度 | 約13.4万円 |
月額30万円程度 | 約20.1万円 |
給付額が335,871円(令和4年8月から令和5年7月までの金額)を超えた場合、これ以上は給付されないために注意しましょう。
実は育児休業中も、働くことは可能です。しかし、1回の支給期間で「休業開始時賃金日額×支給日数の80%」以上の賃金が支払われている場合は、介護休業給付の支給額はありません。80%に満たない場合でも、収入額に応じて支給額が減額される場合があるので注意が必要です。
参考:『Q&A〜介護休業給付〜』
申請方法
申請は原則として会社が行います。介護休業取得の申請は市役所に、介護休業給付の申請はハローワークにてそれぞれ対応してもらえます。「介護休業」を申請するときは、休業する2週間前までに会社に以下の書類を提出しましょう。
- 介護休業届出書
- 住民票記載事項証明書
会社に介護休業申出書がある場合がほとんどですが、会社にない場合は必要事項を含んだ自作でも問題ありません。
「介護休業給付」の申請期間は、介護休業の終了日の翌日から2ヶ月経過する日の属する月の末日までです。例えば、11月1日まで介護休業を取得していた場合は、11月2日から翌年1月30日までが申請期間になります。
介護休業給付に関して、「介護と仕事に忙しくて、申請期間を過ぎてしまった!」「会社が申請してくれなかった」そのような方もいるかもしれません。実は時効になるまで2年間の猶予期間があるため、申請できなかった方でもあとから給付金を受け取る事ができます。
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介護で働けなくても介護離職は避ける
平成29年度の総務省統計局の「就業構造基本調査」によると、日本で介護をしている方は約628万人もいます。その内の約55%にあたる約346万人が仕事と介護を両立している状況です。
同じ調査によると、介護離職は年間10万人程度いることがわかります。 介護離職をしたことについては後悔の声も多く、生涯にわたる収入も著しく減少します。その結果、介護破産に至るケースもあるため、できる限り介護離職は避けるよう心がけましょう。
介護破産を防ぐには、収入を確保しながら、介護保険サービスを上手に使い、支出を可能なかぎり抑える工夫が重要です。「介護休業給付」を受けている間に、サービス利用や支出を抑える準備を行うと仕事と介護の両立がしやすくなります。介護休業給付のほかにも、介護休暇や残業の制限など介護と仕事を両立するための支援があります。会社から手当が出る場合もあるため、一度職場に確認するとよいでしょう。
参考:『平成 29 年就業構造基本調査』
介護しながら働き続けるための準備とは
介護と仕事を両立するために以下の3つを行いましょう。
- ケアマネージャーや地域包括支援センターなどに相談する
- 世帯分離を行う
- 補助金や減税制度を利用する
一般的には世帯分離をすると、介護に関する経済的な負担の軽減が見込めます。ただし、親が子どもの健康保険に被扶養者として加入している場合は、親自身に国民健康保険料の負担が発生するなどのデメリットもありますので、利用する前にはメリットとデメリットを比較することも大切です。
ケアマネージャーに相談する
自分たちだけで介護のすべてをこなす必要はありません。まずはケアマネージャーに相談し、自分たちに合った介護サービスを紹介してもらいましょう。
相談する際に、職場復帰の希望と困っている内容を伝えると、必要なサービスの説明が受けられます。仕事の時間や内容に合わせて、自分はどれくらい休息できる時間が欲しいのか、普段はどの程度の手助けが欲しいのかを明確にしておくと、必要なサービス量が掴みやすくなります。
また、介護の悩みを相談することで、心理的な負担の軽減と解決までの手助けが得られます。状況によっては施設入所を視野に入れるのも1つの手です。公的な機関が運営している施設であれば、比較的費用も安く入所でき、補助金や減税制度も利用できます。
世帯分離を行う
世帯分離とは、「同じ住居で暮らす家族の住民票を分けて、2つの世帯を作る行為」です。実際に「親の介護をしながら働いている」「親と同居して介護を行う予定」といった方が多く利用しています。「同居なのに世帯を分ける事ができるの?」と疑問に思うかもしれませんが、同じ家屋に住んでいても収入が別であれば問題ありません。
世帯分離の大きな目的は、収入にあわせた税金額や介護費用を支払えるようになる点です。介護保険や各種補助金は世帯年収で金額が変動します。世帯分離をしていないと、子世帯と親世帯の収入が合算され、経済的負担が大きくなってしまいます。
「自分たちは世帯分離したほうがいいのかわからない」と悩む方は、住民税非課税世帯になれるかを市役所の住民税課に確認しましょう。親世帯が住民税非課税世帯になると、国民健康保険の減免に加え、各種補助金を利用できる可能性が高くなります。
補助金や減税制度を利用する
仕事と介護を両立するには介護サービスを効率的に利用する必要があります。しかし、どのようなサービスにもお金はかかります。この点を気にしてサービスの量を抑え、自分たちでなんとかしようとする方も少なくありません。
しかし、介護では精神的、身体的、経済的に無理なく続ける事がとても重要です。無理にサービス量を減らすのではなく、補助金等も活用しながら、経済的負担の軽減を目指してみましょう。どの制度も自分で申請が必要です。介護休業中にできる申請は忘れずに行いましょう。
先に紹介した世帯分離は、この補助金や減税制度の効果を最大限に引き出す事ができます。ぜひ活用を検討ください。
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在宅介護でも施設入所でも利用できる補助金や減税制度
「経済的な不安があるのに施設なんて……」と考える方も多いでしょう。しかし、施設入所に利用できる補助金もあり、絶対に無理な話ではありません。介護離職をするよりは、施設に預け、仕事を続けるほうが幸福度が高いと考える方も多いです。
ここからは施設に入所しても使える補助金を紹介します。在宅でも利用できるため、介護サービスを利用したら、速やかに申請しましょう。利用にあたって、どの補助金も世帯年収で補助を受けられる金額が違うため注意が必要です。
1ヶ月の介護費用を軽減する「高額介護サービス費制度」
1ヶ月間の介護保険サービス費の自己負担額が上限金額を超えた場合に、超えた分の費用が還付される制度です。世帯年収によって以下のように上限金額が違います。
所得区分 | 負担限度額(月額) |
---|---|
課税所得が690万円以上 | 140,100円(世帯) |
課税所得が380万円以上690万円未満 | 93,000円(世帯) |
市民税課税世帯で課税所得が380万円未満 | 44,400円(世帯) |
世帯全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯) |
前年の「公的年金等収入額」+「そのほかの合計所得金額」が80万円以下 | 24,600円(世帯)
15,000円(個人) |
生活保護受給者 | 15,000円(個人) |
高額介護サービス費の支給対象は以下の3つです。
- 居宅サービス
- 介護施設サービス
- 地域密着型サービス
福祉用具購入費、住宅改修費、施設サービスの食費、居住費や日常生活費、支給限度額を超えた利用者負担分は支給対象外なので注意しましょう。この制度は上限額を超えた場合、自身で取りに行かなくても申請書が市区町村から届きます。
医療と介護の経済的負担を軽減する「高額介護合算療養費制度」
医療保険と介護保険の自己負担額が上限金額を超えた際に払い戻しを受けられる制度です。8月1日~翌年7月31日まで1年間を該当期間(1年度)として計算します。介護費用を軽減する「高額介護サービス費制度」と医療費の自己負担額を軽減する「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用しても、さらに負担が残っている場合に費用の軽減ができます。ただし、自己負担限度額を超えた金額が500円未満の場合は支給されません。
上限金額は以下のように年収によって細かく定められています。
負担割合 | 所得区分 | 後期高齢者医療制度+介護保険制度 |
---|---|---|
3割 | 現役並み所得3 課税所得690万円以上 |
212万円 |
現役並み所得2 課税所得380万円以上 |
141万円 | |
現役並み所得1 課税所得145万円以上 |
67万円 | |
1割 | 一般 課税所得145万円未満 |
56万円 |
区分2 (住民税非課税等) |
31万円 | |
区分1 (住民税非課税等) |
19万円 |
また、医療費の部分では入院時の食事代や差額ベッド代など、介護費用の部分では、高額介護サービス費と同様の項目が支給対象外になります。高額介護サービス費制度と同じく、上限額を超えた場合、自身で取りに行かなくても申請書が市区町村から届きます。
実は介護サービスも一部対象「医療費控除」
医療費控除は1年間の医療費が多くなったときに減税してもらえる制度です。1月1日から12月31日までに支払った医療費が控除されます。
居宅サービス | 施設サービス |
---|---|
|
|
上記の居宅サービスを受けている間は、通所介護訪問や介護、看護・小規模多機能型居宅介護などのサービスも控除対象となる可能性があります。また、かかりつけ医に「おむつ使用証明書」を発行してもらうと、居宅サービス等でおむつを使用した場合も医療費控除の対象です。
確定申告が必要になるため、医療費等の領収書を忘れずに保管しておきましょう。
食費と滞在費を軽減する「介護保険負担限度額認定」
入所や入院、短期入所(ショートステイ)を利用されたときの食費及び居住費(滞在費)を減額してくれる制度です。対象となるサービスは以下の通りです。
- 特養
- 老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 地域密着型特養
この制度はあくまで非課税世帯などの低所得者向けです。そのため、以下の要件すべてを満たす必要があります。
- 本人及びその配偶者(内縁関係も含む)が市民税非課税である
- 本人と住民票上、同一世帯である方が市民税非課税である
- 預貯金等合計額が、基準額以下である
申請は市役所で行う事が可能です。自分が当てはまるかわからない場合は、一度高齢福祉介護課に相談してみましょう。
参考:『介護保険負担限度額の認定について ~介護保険施設を利用するときの居住費と食費~【高齢者福祉課】』
給付金や補助金を受けつつ介護施設に入りたいと考えている方は、ケアスル介護での相談がおすすめです。
ケアスル介護なら、専任の入居相談員に施設探し~入居相談まで無料で相談することができ、安心して介護施設探しを進めることができます。
施設選びに失敗したくない方は、ケアスル介護で相談してみてはいかがでしょうか。
ピッタリの施設を提案します
在宅介護で利用できる補助金
次は在宅で介護を続ける場合にのみ、利用できる補助金を紹介します。在宅での介護は施設入所と比べて、どうしても家族の負担が重くなります。制度をうまく活用して、負担の軽減を図っていきましょう。
安心できる環境にリフォームしたいときは「居宅介護住宅改修費」
自宅のリフォームをした場合、上限20万円の工事に対して介護保険で補助金が支給されます。そのうち、介護負担割合によって1〜3割の自己負担が必要です。例えば、上限額20万円のリフォームをした場合、介護負担割合が1割の人は2万円の自己負担が発生します。「居宅介護住宅改修費」の対象となる工事は以下の通りです。
- 手すり設置
- 段差の解消
- 床材の変更・滑り止め設置
- 扉の取り換え
- 便器の取り換え
- 上記に付帯して必要となる工事
住宅が賃貸の場合は、家主の承諾が得られればリフォームができます。ただし、退去する際の現状復帰費用は、全額自己負担になるため注意してください。申請にはケアマネージャーの協力が必須のため、気になる方は相談してみましょう。
福祉用具の購入には「福祉用具購入費」
介護保険での福祉用具はレンタルが基本です。しかし、入浴グッズなどレンタル品を利用するのに抵抗がともなうものや、使用により品質が変わってしまうものは福祉用具購入費が支給されます。これらの福祉用具は「特定福祉用具」と呼ばれ、以下の5品目が対象です。
- 腰掛便座
- 特殊尿器
- 入浴補助具
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具の部分
この補助金も年間10万円までは介護保険から支給されますが、自己負担割合によって1〜3割の自己負担が発生します。ただし、特定福祉用具販売事業所以外から購入した場合は、支給の対象にならないため注意が必要です。
家族だけで介護をしている方向け「家族介護慰労金」
「家族介護慰労金」とは、要介護度の高い方を、介護保険のサービスを利用せずに在宅で介護している場合に支給される補助金です。家族介護手当とも呼ばれ、要介護4・5などの重度の要介護者を、家族だけで介護している場合、年間10〜12万円を支給している自治体が多いようです。
しかし、在宅介護者全員が対象になるわけではなく、支給金額にも上限がありますし、非課税世帯であることを条件にしている自治体が多くなっています。各自治体により条件が異なるため、詳細は市区町村に問い合わせると確実です。
介護はいつ終わりが来るのか予想がつきません。そんな中、要介護度の高い方を家族だけで介護するのは大きな負担となります。適切に介護サービスを利用したほうが介護をする側・される側にとってメリットが大きいです。そのため、家族介護慰労金は、「支給条件に該当していたから申請する」といった考えでいたほうがいいでしょう。
介護で働けなくても補助金を活用できる
介護で働けない期間は「介護休業給付」が受けられます。収入の保証があると安心ではありますが、すべてを賄えるわけではありません。職場復帰のためには、ケアマネージャーと相談し、ご本人と自分にとって必要なサービスを過不足なく受ける必要があります。
介護はいつまで続くかわからないものです。関わるすべての方が無理なく続けられるよう、介護保険制度や補助金、減税制度を正しく活用し、今後の経済的な不安を軽減して行きましょう。
「介護休業給付」を受け取る事ができます。介護休業を取得する2週間前には会社に申請する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
まずはケアマネージャーに相談しましょう。現在の状況に合わせて必要なサービスを利用する事ができます。経済的に不安があり、サービスを増やさない方もいらっしゃいますが、世帯分離や補助金の活用によって解決できる可能性があります。詳しくはこちらをご覧ください。