高齢者が入浴しないとどうなる?入浴拒否の原因や対応も詳しく解説

高齢者が入浴しないとどうなる?入浴拒否の原因や対応も詳しく解説

入浴拒否をしている高齢者の体調面でお悩みの方は多いのではないでしょうか。

ここでは、高齢者が入浴しないことで生じる健康リスク、入浴拒否の原因や対応について、詳しくご紹介していきます。

この記事を最後まで読み終えると、入浴が高齢者の健康に及ぼす影響が分かり、スムーズな入浴介助につなげることに役立ちます。

高齢者の入浴拒否にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

5問の質問でわかる!
ピッタリの施設を提案します
STEP
step1
1
step2
2
step3
3
step4
4

高齢者が入浴拒否する5つの原因・理由

高齢者が入浴を拒否する原因として、老化にともなう認知力の低下や筋力の低下が影響している可能性があります。

そこで、高齢者が入浴を拒否する5つの原因・理由をご紹介していきます。

高齢者が入浴したがらない理由について知りたい方は、確認してください。

①入浴が必要だと感じていない

高齢者が若い頃は毎日の入浴習慣がなく、必要な時に銭湯へ行くのが慣習でした。

毎日、自宅で入浴するのは、高齢者にとって比較的新しい習慣です。

そのため、「毎日入る必要はない」と考えている高齢者もいます。

また、認知力が低下していると、最後に入浴したタイミングが曖昧になりがちです。

「この間入ったばかりだからまだ入浴しなくても大丈夫」と感じてしまいます。

判断力や思考力が低下し、体の汚れや体臭を認識できず、入浴の必要性を感じられない方もいます。

必要性がなければ、毎日入浴をしていなくても、本人にとっては違和感がありません。

②入浴するのが面倒くさい

加齢や健康状態の悪化にともない体力が低下している高齢者にとって、入浴の一連の流れは著しく体力を消耗します。

入浴後の爽快感よりも疲労感の方が強く、入浴を面倒に感じてしまいがちです。

毎回全身を洗うのではなく、部分浴であれば入浴時間を短縮できます。

必要に応じて、介護者がサポートして入浴時の負担を減らしましょう。

また、入浴後の身体の怠さや疲労が強い場合、ベッドでの休息も大切です。

③人前で裸になりたくない

入浴介助が必要な方は、衣類を脱いだ後に身体を見られることや、無防備な状態になるため、抵抗を感じる場合があります。

特に高齢の女性は、男性の介護者に対して羞恥心を感じがちです。

また、認知症によって物とられ妄想のある方は、脱いだ服を「盗まれてしまうかもしれない」という恐怖心が芽生えます。

物取られ妄想の方は、頭ごなしに否定すると、「バカにされた」と怒りだしてしまう場合があるので、本人の不安な気持ちをしっかり傾聴しましょう。

④入浴を理解できない

認知症の方は、これまで生活習慣の一つであった入浴行為そのものを理解できない可能性があります。

浴室内でも何をされるか想像できず、不安や恐怖心を感じて拒否につながります。

認知症の方には入浴行為や、浴室場所について説明しても、長時間覚えていられません。

その都度、入浴や必要な動作について説明する必要があります。

⑤浴室の環境が合っていない

浴室の環境が合わず、入浴拒否につながっている場合があります。

高齢者が浴室で感じやすい悩みや不安は次の通りです。

  • 浴室が滑りやすい
  • 椅子からの立ち上がりに不安がある
  • 浴槽に入りにくい

「入浴時に床で転倒しかけてヒヤッとしたため、怖くて入浴できなくなってしまった」と警戒する高齢者は少なくありません。

高齢者本人が入浴している状況を観察し、入浴のしにくさを感じている箇所を把握・見直しましょう。

合っていない環境で入浴を続けているうちに、思いがけない事故や怪我につながるおそれがあります。

5問の質問でわかる!
ピッタリの施設を提案します
STEP
step1
1
step2
2
step3
3
step4
4

高齢者が入浴しないとどうなる?

高齢者が入浴しないことによって、身体的・精神的な健康リスクを招く恐れがあります。

そのため、介護者はどのような健康リスクがあるのか把握し、入浴援助につなげていくことが大切です。

高齢者が入浴しない場合の健康リスクについて詳しく紹介していくので、チェックしてみましょう。

①要介護リスクが上がる

実はこれまでに、「入浴頻度が週7日以上の高齢者は、週2回以下の高齢者に比べて、要介護リスクが30%低い」ことが国内の研究で分かっています。

この研究は、全国18の市町村に居住する高齢者を対象として、浴槽につかって入浴する頻度と、その後の新規要介護認定との関係を3年間追跡調査したものです。

入浴にともなう一連の動作や水圧、血行促進といった刺激は運動効果が得られます。

したがって、入浴は高齢者の健康維持につなげられるとされています。

参考:(千葉大学「報道発表 Press Release No: 157-18-20」)

②皮膚疾患や感染症リスク

加齢にともない、免疫力や抵抗力が弱っている高齢者は、皮膚疾患や感染症を引き起こしやすい状態です。

また、適切なスキンケアを行わなければ、皮膚の乾燥や痒み、掻きこわしといった肌トラブルにもつながってしまいます。

特に、自力でトイレに行くのが難しく、オムツを着用している方は、陰部を毎日清潔に保つ必要があります。

陰部が不潔なまま過ごすと、高齢者の尿路感染症は重症化しやすく介護度が上がってしまうケースもあります。

全身状態の悪化を予防するためにも、全身の清潔維持を心がけましょう。

③体臭が生じる

入浴をしないと、体臭が生じ、他者との関わりにも影響が出てきます。

臭いは五感の中でも一番慣れてしまうものなので、自分では気付きにくいものです。

体臭が原因で周囲から避けられてしまい、社会的に孤立し、自室に引きこもりがちになってしまう高齢者は少なくありません。

交流の機会が絶たれてしまうと活動量の低下や、抑うつ状態を招くケースも考えられます。

高齢者が社会性を失わず、周囲の人と交流の場を持つためにも入浴による清潔保持は大切です。

④新陳代謝が促進されにくい

入浴をしないと新陳代謝が悪くなり、免疫力の低下にもつながります。

加齢にともない、体力や活動量が低下するため、若い頃に比べると高齢者の新陳代謝は低下するものです。

しかし、洗髪や洗身による刺激や、湯船につかって体を温めることで、血行が促進され、新陳代謝が活発になります。

また、入浴時の温熱によって関節の拘縮を和らげる効果が、期待できるのも嬉しいポイントです。

⑤睡眠不足に陥りやすい

入浴しない状態が長期間続くと、リラックスしにくく、自然な眠りにつきにくいため、疲労がたまりやすくなります。

寝つきの悪さや、早朝に目が覚めて眠れなくなるといった睡眠障害に悩み、睡眠導入剤を服用する高齢者は少なくありません。

しかし、睡眠導入剤は起床時の転倒や、日中の集中力の低下といったリスクが考えられます。

できるだけ睡眠導入剤には頼らず、自然な睡眠を促して、健康リスクを回避するのが望ましいです。

そこで、睡眠の質を改善したい場合は、入浴時に温かいお湯にしっかりつかりましょう。

全身の血行が促され、副交感神経が優位になるので、リラックス効果による自然な眠気が期待できます。

「疲れがなかなかとれない」「よく眠れない」と訴えのある高齢者の方には、リラックスしてゆっくり入浴できる時間が大切です。

入浴したがらない高齢者への対応

高齢者が入浴を拒否することに悩む同居家族は多いです。

しかし、対応の仕方を工夫すれば、スムーズな入浴援助につなげられる可能性があります。

入浴したがらない高齢者への対応として、おすすめの方法をご紹介していきます。

①本人の意思を尊重する

高齢者本人が「入浴したくない」と感じている場合、まず本人の気持ちに寄り添いましょう。

介護者が必死になって入浴させようとしても、かえって逆効果です。

入浴を無理強いすると、入浴に対するネガティブなイメージが残ってしまい、入浴習慣の継続にはつながりにくいです。

焦ったり、イライラせず、ゆったりとした気持ちで見守るように心がけましょう。

入浴しない理由を率直に聞いてみるのもおすすめです。

②入浴の伝え方や誘導方法を工夫する

認知症状が進行すると、「入浴」と言葉だけを聞いても、入浴にまつわる一連の流れを理解できない場合があります。

浴室に連れていかれても、どんな場所なのか分からず、混乱してしまうかもしれません。

そのため、「脱衣所に行きましょう」「服を脱ぎましょう」と動作を短く区切って丁寧に伝えてください。

次の動作がわかると、高齢者の不安感を取り除くことができます。

また、裸に抵抗がある方に対しては、着替えの際にバスタオルを掛けてあげるといった配慮も心がけましょう。

③清拭や足浴の実施を提案する

入浴を誘うための導入として、まず清拭や足浴、手浴の実施を提案しましょう。

負担の少ない方法で清潔を保つ習慣が身に着けられれば、最終的に入浴までステップアップを目指せます。

清拭や足浴、手浴によるメリットは次の通りです。

  • 短時間で終わるので身体への負担が少ない
  • 爽快感やリラックス効果を得られる
  • 部分的な清潔を保てる

高齢者本人がメリットを感じることで、清潔保持への意識が高まりやすく、入浴への興味・関心につなげられます。

また、足浴・手浴でアロマオイルや入浴剤を使うと、よりリラックスできるのでおすすめです。介護者にとっても用意しなければならない物品が少ないので、空いた時間に手軽に行えるのも魅力的です。

在宅介護で親の入浴介護が難しくなってきたという方はケアスル介護で施設探しをするのがおすすめ。

入居相談員にその場で条件に合った施設を提案してもらえるので、初めてでもスムーズに条件に合った施設を探すことが出来ます。

初めての施設探しで何から始めればよいかわからないという方はぜひ利用してみてください。

5問の質問でわかる!
ピッタリの施設を提案します
STEP
step1
1
step2
2
step3
3
step4
4

高齢者が入浴しない場合の注意点・ポイント

高齢者が自宅で入浴しない場合、環境の調整を図る必要があります。

そこで、高齢者が入浴しない場合の注意点・ポイントを解説していきます。

①浴室の改修・福祉用具の使用を検討する

現在の浴室の環境が合わず、入浴のしにくさを感じている方に対しては、浴室の改修や福祉用具の使用を検討しましょう。

浴室で高齢者が感じやすいお悩みや、改善ポイントは次の通りです。

改善したい箇所 お悩み おすすめの浴室改修・福祉用具
洗い場の椅子 背もたれがないのでバランスを崩して倒れそう シャワーチェアの使用
若者向けの浅くて細長い浴室 足を伸ばすとと後ろに滑りやすく、溺れてしまうのではないかと不安 滑り止めマットや浴槽内椅子を使用する
浴槽付近や椅子の付近 つかまる場所がなく転倒しそうで怖い
  • 手すりの設置
  • バスボードの使用

浴室の改修や福祉用具の使用にかかる費用は、介護保険でまかなえるため、自己負担額を少なく済ませられます。

シャワーチェアやバスボードといった福祉用具は、改修よりも手軽に環境改善ができるのでおすすめです。

「どんな福祉用具がいいのか分からない」場合は、ケアマネージャーや福祉用具専門店で相談してください。

②介護サービスの利用を検討する

自宅での入浴拒否が強い場合、デイサービスの入浴サービスや、訪問入浴サービスの利用がおすすめです。

介護スタッフは、入浴拒否のある高齢者の対応に慣れているため、スムーズな入浴が可能です。

どのような声掛けや介助を行っているのか聞いてみることで、本人に合った入浴の誘導方法の発見に役立ちます。

また、場所が変わると、本人の意欲にも変化が生じる可能性があります。

「今日は温泉に行きましょう」といった前向きな声掛けも、本人にとって楽しみにつながりやすいので、工夫してみましょう。

介護サービスは、介護保険でまかなえますが、利用するためには、まず介護認定が必要です。

自己負担限度額内で利用できる介護サービスや回数について知りたい方は、ケアマネージャーに相談しましょう。

入浴で利用できる介護サービスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

入浴で全身の清潔を保ち、健康な生活を送ろう

加齢に伴い、体力の低下した高齢者にとって入浴は負担が大きいです。

入浴後の疲労感によって、入浴の拒否につながってしまう場合も少なくありません。

また、認知力が低下している方では、入浴や清潔の必要性を理解するのが難しいです。

しかし、入浴しない状態が続くと、皮膚疾患や感染症、睡眠不足といったリスクにつながります。

また、体臭によって周囲から孤立すると、社会的な関わりの場が失われひきこもりがちになってしまうケースも考えられます。

入浴は健康リスクを減らせるだけでなく、高齢者が自分らしく生き生きと生活するうえで大切です。

必要時、浴室の改修や福祉用具の導入、介護サービスの利用を検討しながら、清潔の保持に努めましょう

そのほか高齢者の入浴について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事
ヒートショックの仕組みと対策について|対処法についても徹底解説
ヒートショックの仕組みと対策について|対処法についても徹底解説
5問の質問でわかる!
ピッタリの施設を提案します
STEP
step1
1
step2
2
step3
3
step4
4
入浴の必要性を理解してもらえずイライラしてしまいます

何度説明しても入浴の必要性を理解してもらえず、スムーズに入浴に誘導できないと、イライラしてしまうケースは多いです。しかし、強い口調で入浴を強制しても、関係性の悪化につながります。本人のペースや意思を尊重し、焦らずにゆっくり介護することで、本人の入浴への意欲を引き出せる場合もあります。詳しくはこちらをご覧ください。

何度説明しても入浴してもらえない場合はどうすればいいですか?

まずは手浴や足浴を行い、清潔保持による爽快感を感じてもらう方法がおすすめです。特に、清拭時に背中に温かい蒸しタオルを押し当てると、高いリラックス効果を得られます。無理なく行える範囲から清潔保持を始めてみてください。詳しくはこちらをご覧ください。

5問の質問でわかる!ピッタリの施設をご提案
プロに施設を提案してもらう