• 認知症
  • 【公開日】2022-10-18
  • 【更新日】2023-06-12

認知症リハビリとは?効果や自宅で簡単にできるリハビリもご紹介

認知症リハビリとは?効果や自宅で簡単にできるリハビリもご紹介

認知症は徐々に進行する病気です。少しでも認知症の進行を抑え、本人らしく自立した生活を過ごしてほしいと思う家族は少なくありません。認知症リハビリは、自立した生活を過ごすための方法の一つです。

しかし、実施方法や注意点などがわからなかったり、家族だけで行うのが大変だったりするのが現状です。この記事では、認知症リハビリの目的・方法・自宅でできる方法を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

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東京都健康長寿医療センター 脳神経内科 部長
監修岩田 淳
所有資格:総合内科専門医,日本内科学会認定医,日本神経学会認定神経内科専門医・指導医.日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・指導医,日本認知症学会専門医・指導医
専門分野:脳神経内科
職業: 医師
出身組織: 東京大学大学院医学系研究科

東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に従事。早期段階のAD、レビー小体型認知症の診療が専門。2020年4年より東京都健康長寿医療センターの脳神経内科部長として赴任。詳しくはこちら

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認知症リハビリの目的と特徴

認知症リハビリを知らない方でも必要性を理解できるように、ここでは目的と特徴をご紹介します。認知症リハビリは、家族や周囲の方が認知症にならない限り知る機会がほとんどありません。詳しいリハビリ内容について把握したいご家族はぜひ参考にしてください。

認知機能の低下を抑制する

認知症リハビリは「認知症を悪化させない・遅らせない」が目的です。一方、「元の状態まで回復させる」のが一般的なリハビリです。

認知症は徐々に進行するため、発症すると元の状態には戻せません。さらに、できなくなる動作や作業などが増加すれば、本人の気分も落ち込みやすくなるでしょう。

気分が落ち込めば意欲が低下し、認知症が悪化する負のサイクルに陥ります。本人らしい生活を維持するためにも、家族全員が前向きな気持ちで取り組むよう努めてください。

認知症リハビリは薬を一切使用せず、本人の機能・能力を維持するための役割や、衰えるスピードを抑制する効果があります。投薬の必要がないので自宅でも導入しやすいリハビリの一つです。

人との関わりで無理なく継続できる

認知症リハビリには「人との関わりで無理のない継続が可能」といった特徴があります。そのため、一般的なリハビリのような専用器具は必要ありません。

認知症リハビリで行うメニューは生活に密着して無理なく続けられ、人や社会と関わり続けてつながりを得るものです。効果的なリハビリを取り入れたとしても、人と社会との関わりが無くなってしまえば孤独を感じてしまうでしょう。

人とのつながりは本人への刺激になるだけでなく、モチベーションの維持ができるため、日常生活の中にある作業を内容に取り入れています。

しかし、手軽にできる反面、一般的なリハビリのように効果が目に見えないといったデメリットがある点に注意が必要です。認知症リハビリを取り入れる場合は、本人のモチベーションを維持しつつ無理なく続けられるよう留意しましょう。

 

自宅療養ではなく、介護施設や老人ホームでも認知症のリハビリは行えます。むしろ、そういった施設の方がリハビリに関するノウハウがたまっているため、より効果の高いリハビリを行える可能性があります。

ただ、介護施設や老人ホームは全国に数多くあるため、ご自身に合った施設を選ぶのは至難の業です。そこでおすすめなのがケアスル介護です。

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エビデンスに基づく認知症リハビリの種類と効果

認知症リハビリではエビデンスに基づいた日常生活の作業を取り入れています。日常生活の作業はさまざまな種類があるため、作業の種類・効果を知りたい方もいるでしょう。ここでは、認知症リハビリの種類と効果について解説するため参考にしてください。

理学療法士と行う運動療法

認知症リハビリには、認知症を悪化させない・速度を遅らせるといった目的があります。「理学療法士」と呼ばれるリハビリのプロと行う「運動療法」では、体を動かしながら筋肉量の衰えを抑制する効果があります。

認知症が進行すると活動意欲そのものが低下するため、活動に対して消極的になるのは珍しくないものです。しかし、活動しなければ気分が落ち込んだり、筋力・体力が低下したりして寝たきりになる可能性があります。

施設を利用している場合、理学療法士と一緒に運動療法や物理療法を併せて行います。例えば、運動療法では散歩・ストレッチ・プール・ラジオ体操など、誰でも一度は経験がある内容です。経験がある運動があれば、現状でできる範囲で内容に取り入れる場合もあります。

施設によってはレクリエーション活動を行います。さまざまな方法がありますが、本人の状態に合わせて行う場合がほとんどです。

また、施設を利用する際には年齢層の違いや雰囲気の違いで本人がストレスを感じてしまう場合があるため、前もって施設の雰囲気を確認するようにしましょう。

高齢者のレクリエーションについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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コミュニケーションを積極的にとるリアリティ・オリエンテーション

コミュニケーションを中心にした「リアリティ・オリエンテーション」も大切です。リアリティ・オリエンテーションとは会話を取り扱ったリハビリの一つで、脳を刺激して症状を遅らせると同時に、周囲とのコミュニケーションを深めるはたらきがあります。

会話の中に時間・季節・自分の名前などを入れるのがポイントです。あらゆる情報を会話に取り込めば、自身の状況が理解できているかの能力である「見当識」が確認しやすくなります。

認知症の程度によっては、上手く言語化できない方もいるでしょう。そういった方のために、言語聴覚士も連携して行うケースもあります。誰とも話さずにいてはストレスが溜まります。リアリティ・オリエンテーションを取り入れて話す機会を作るのはストレス軽減にもなるため、リハビリには最適な方法といえるでしょう。

ゆったりとした時間を過ごす音楽療法

音楽療法は「音楽を取り入れたリハビリ」で、音楽を流しゆったりとした時間を過ごす・カラオケをする・楽器を演奏するなどといった内容が主です。

施設でカラオケを行うときは好きな曲を歌ってもらい、音楽を流すときはリハビリを受ける世代が知っている音楽を選曲します。音楽を演奏するときは、麻痺や拘縮などがあっても演奏できる楽器を使用して、さまざまな症状を抱える方でも参加できるリハビリ内容です。

自宅で音楽療法を行うときも同様に、本人が好きな音楽を流したり歌ったりしましょう。もし、本人が楽器を持っていれば、愛用の楽器で演奏すると抵抗なくリハビリが行えます。ただし、自宅で行う場合は騒音にならないよう、住宅環境に合わせた音量で行ってください。

回想法で話をして落ち着かせる

過去の話をする「回想法」は気分を落ち着かせる効果があります。具体的には「子どもの頃の楽しかった思い出はありますか?」と思い出す行為を促し、それ自体が脳への刺激となります。さらに、話をすると頭の中が整理でき、気分が落ち着くといった流れです。

認知症は、新しい記憶は忘れても過去の記憶は忘れません。回想法は、認知症の特徴を活かした認知症リハビリといえるでしょう。

楽しかった内容だけでなく、辛かった内容でも問題ありません。話をすると頭の中を整理でき、リラックス効果も期待できます。回想法を行うときには、映画のポスターや写真などを使ったり、スタッフが話題を提案したりすると話すきっかけにつながるでしょう。

自宅で行う場合は、昔のアルバムやビデオなどを使い、きっかけづくりを意識してください。なお、本人が話したくない内容を無理に聞き出す行為はやめましょう。

回想法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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あらゆる方向からアプローチする認知刺激療法

あらゆる方向から「見る・触る・聞く・匂いを嗅ぐ・味わう」の五感を刺激し、脳へアプローチする「認知刺激療法」も認知症リハビリの一つです。例えば、料理では「見る・触る・聞く・匂いを嗅ぐ・味わう」の5つの感覚を刺激します。食材や道具を触る行為や、出来上がるまでの匂いによって、さまざまな部分が刺激されるため、認知症の症状を抱える方には効果的です。

マッサージには「触る・匂いを嗅ぐ」を、映画鑑賞には「見る・聞く」を刺激します。日常生活のあらゆる場面で五感を刺激できるため、認知刺激療法は自宅でも積極的に取り入れるとよいでしょう。

認知症リハビリのメリット・デメリット

ここでは認知症リハビリのメリット・デメリットについてご紹介します。さまざまな方法がありますが、接し方が難しい認知症だからこそ、取り入れる前にはメリット・デメリットを把握しておきましょう。

楽しみながらできることがメリット

メリットは「楽しみながらできること」ですリハビリと聞くと拒否される場合も少なくありません。認知症リハビリは一般的なリハビリとは違い、家事や遊びといった「一度は経験のある内容」を取り入れています。

また、誰かと一緒にできる内容が多いため、人との関わりや社会とのつながりを保ち、孤独や孤立を感じにくいです。一つひとつの作業ができると達成感も得られるため、本人の自信回復にもつながります。

そして最大のメリットは「認知症が進行してもできる点」です。経験がある家事や趣味であれば、昔の記憶として残っています。そのため、認知症が進行しても続けやすいのです。

無理に行うとモチベーションが下がることがデメリット

本人の意思とは別に、無理に行えばモチベーションが下がる点がデメリットです。本人にやる気がなく、無理に行おうとすれば拒否され、続けられません。さらに職員や家族に対してマイナスの感情を抱く可能性もあるので、無理強いをせず、本人の気が向いたときに行うのがよいでしょう。

実施する前に忘れてならないのは、「本人に声掛けをする」または「バイタル測定」などを取り入れた体調確認です。そのときの体調に合ったちょうどいい内容にすると、本人のやる気を維持できます。

ただし手軽にできるものの、必ずしも効果があるわけではありません。「できる・できない」を繰り返す特性から、リハビリを行っていても症状が進行する可能性があるため、気長に取り組むとよいでしょう。

 

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自宅でできる認知症リハビリ4選

認知症リハビリを自宅で行いたい方のために、自宅でできる方法を4つご紹介します。どの内容も簡単・手軽・誰でもできるものばかりであるため、本人の気分転換もかねて行ってみましょう。

パズルや手芸などの作業療法プログラムを実践する

「作業療法プログラム」は日常での作業や趣味が該当します。料理・塗り絵・音楽鑑賞・掃除は気軽に行えるほか、天気や気候に関係なく行えるのが特徴です。

例えば、塗り絵は配色を考えたり、どのような色だったかを思い出したりする必要があるため認知症予防に効果的です。「塗り絵=子どもの遊び」と思われがちですが、大人用の塗り絵を使うと自尊心を傷つけずに楽しんで取り組めるため人気があります。

また、カレンダーを作って色を塗るような作業を取り入れると、日付の感覚を刺激するため、見当識の改善につながります。家族が一緒に取り組み、感想を言い合ったり、教えあったりすると本人の楽しさがより増すでしょう。

運動療法も取り入れて筋力トレーニング

作業療法プログラムのほかにも、運動療法も兼ねた「筋力トレーニング」も効果的です。筋力トレーニングといっても特別な器具は不要で、散歩だけでも十分な効果が得られます。

散歩に出掛ければ外気浴ができ、移り変わる四季を感じるため気分転換もできます。散歩先で誰かと会話をしたり挨拶をしたりする程度の刺激でも、自宅にいたら受けられない貴重な刺激です。

ただし、一人で散歩にいかせると帰宅できなくなったり、事故に巻き込まれたりする可能性があります。安全面を考慮して、散歩は可能な限り家族と一緒に行くよう心がけましょう。

家族で会話することも認知症リハビリになる

家族で何気ない会話をするのも大切な回想法です。家族で思い出話をすると脳への刺激になるだけでなく、家族間のコミュニケーションにもつながります。忙しくて特別な時間が作れない方もいるでしょう。

食事やおやつの時間は一緒に食べるよう意識し、思い出話をすると、和やかな雰囲気の中でさまざまな会話が楽しめます。その日にあったできごとを会話の糸口にしたり、写真やビデオなどを見たりすると思い出話に花が咲くでしょう。

認知症リハビリ教材も活用してみよう

認知症リハビリの教材も活用してみましょう。自宅で行う場合、手軽さがあるもののさまざまな物を用意しなければいけなくなるため大変です。

そんなときはドリルや無料でダウンロード可能な教材を取り入れてみてください。ドリルを活用すれば費用や時間をかけず気軽にリハビリが行えます。

実際に専用のドリルを使用する病院もあります。例えば計算・日本語の穴埋め・日常生活を題材にしたタイプです。自宅で実施する場合に何を試せばいいかわからないときは、各種教材を取り入れてみましょう。

認知症リハビリを自宅で行う際の注意点

自宅では家族が一緒になって行うのが一般的です。気心の知れた家族だからこそ、お互いに気兼ねなく言い合える間柄でもあります。自宅でリハビリを継続する場合は以下の注意点を確認してください。

人格を否定しない

思ったようにリハビリが進まなくても人格を否定してはいけません。忙しかったり課題ができなかったりすると、人格を否定する言葉を発したくなるときもあるでしょう。

プライドを傷つけるような言葉や、否定・叱る言葉は人格を否定します。少しでも気持ちにイライラが生じたときは、安全を確保して離れ、本人の気持ちがクールダウンしてから再開してください。

無理をしてイメージを悪くしない

「少しでも認知症の進行を抑えたい」との思いから、本人の気持ちを無視してリハビリを進めたくなる気持ちもあるでしょう。しかし、無理をするとリハビリそのものに対してや介助する家族に対してのイメージが悪くなってしまいます。

本人の体調が悪かったり、気分が沈んでいたりするときの無理は禁物です。基本は本人のペースに合わせ、リハビリに対する気持ちを尊重するよう心がけましょう。自宅で継続的に行うためには、本人や家族のペースが合ったときに行うとスムーズに進みやすいです。

マイナスの言葉を使わない

家族間だとついマイナスの言葉を使いたくなるときもあるでしょう。会話中に求めている返答がなくても「間違っている」「だめだな」などと否定的な言葉を使うのは避けてください。

あくまで本人のペースや気持ちを尊重し、自尊心を傷つけずに接する必要があります。特に、イライラしているときはネガティブな言葉は使わないよう注意し、家族や本人の気持ちが安定しないときは、クールダウンを取り入れるとよいでしょう。

まとめ

認知症リハビリの具体的な方法やメリット・デメリットなどをご紹介しました。認知症リハビリは自宅でもできる方法ばかりです。本人や家族が一緒にできる内容を選び、ご家族のためにもぜひ自宅で行ってみてください。

認知症リハビリに関してよくある質問

Q.困ったことがあるときは誰に相談すればいいですか?

A.不安や相談事があれば、地域包括支援センター・行政の窓口・利用している介護サービス事業所などで相談できます。また、認知症リハビリを担当している作業療法士や病院・施設のスタッフに相談をしましょう。

Q.認知症リハビリはどこの施設でやってくれますか?

A.老人ホームは病院ではないため認知症リハビリは実施されていません。希望する方はリハビリ病院や老人保健施設が行っているので問い合わせて見ましょう。詳しくは地域包括支援センター・行政の窓口・利用している介護サービス事業所などで相談をしてください。

そのほか認知症について役立つ情報を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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