薬剤師も「かかりつけ」を持つ時代!どんなときに役に立つかを紹介

薬剤師も「かかりつけ」を持つ時代!どんなときに役に立つかを紹介

近年「かかりつけ薬剤師」という言葉を耳にする機会が増えました。また薬局でかかりつけの「同意書」を提示された方も多いかもしれません。

皆様はかかりつけ薬剤師をご存じでしょうか。

かかりつけ薬剤師制度は、医者にかかりつけを持つように薬剤師も「かかりつけ」を1人決め、別々の科の薬をすべて1人の薬剤師で管理し、健康全般についてアドバイスも受けられるように制度化されたものです。

この記事では「かかりつけ薬剤師」の制度について、概要とメリット・利用の仕方について解説します。薬を受け取るだけではない薬剤師のこれからの活用法が理解できますので、ぜひ最後までお読みください。

医療ライター
専門分野:医療・介護系全般
職業: 医療ライター

大学卒業後、医療専門新聞社である株式会社薬事日報社に入社。 約13年間、新聞記者として厚生日比谷クラブを始めとする記者クラブに所属し、厚生労働省や日本医師会、日本薬剤師会、医療現場、大学、関連学会などを取材して歩く。 2013年にフリーランスの医療ライターとして独立。独立後は医療・介護現場を幅広く取材しつつ新聞や雑誌、書籍、ウェブサイトなどで執筆。 これまで取材してきた医師、看護師、薬剤師などの医療従事者は500人を超える。主な執筆媒体は「プレジデント」「ドクターズマガジン」「マイナビメディカルサポネット」「We介護」など。 共著は「在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期」(世界文化社)。現在、自分自身も2人の娘を育てながら認知症の母を介護中。詳しくはこちら

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かかりつけ薬剤師とは?

かかりつけ薬剤師とは、1人の患者さんの薬を1つの薬局・1人の薬剤師が担当し、患者さん一人ひとりのニーズに沿った相談などに応じてくれる薬剤師のことです。

これまでは病院を受診すると病院の近くの「門前薬局」で薬を受け取ることが大半でした。つまり複数の医療機関を受診した場合に別々の薬局で薬を処方されていたわけです。

かかりつけ薬剤師制度では、1人の患者さんの薬は1つの薬局・1人の薬剤師が担当し、管理してくれます。そうすれば薬局ごとにほかで処方された薬について何度も質問を受ける煩わしさも無くなるでしょう。

このように便利なかかりつけ薬剤師ですが、どの薬剤師でもかかりつけになれるわけではありません。次にかかりつけ薬剤師になるための条件について説明します。

かかりつけ薬剤師になれるのはどんな人?

薬剤師が「かかりつけ薬剤師」になるためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 薬局での勤務経験が3年以上ある
  • 現在、勤務している薬局で週32時間以上勤務をしている
  • 現在、勤務している薬局に1年以上籍を置いている
  • 「研修認定薬剤師」資格を取得している
  • 医療に関わる地域活動に参加している

かかりつけ薬剤師になるには、薬剤師としての豊富な経験と健康に関わる広い知識が必須です。

具体的には、薬剤師として勤務しながら別途研修を受け「研修認定薬剤師」という資格の取得が必要になります。さらに認定資格は3年ごとに新たな単位を取得し更新しなければなりません。

そのほかに医療の講演会や学校薬剤師・救急夜間薬局への派遣など、医療関連の地域活動への参加が求められています。

これらの条件を満たすかかりつけ薬剤師は、薬剤師の中でもとりわけ信頼のおける人材といえるでしょう。

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かかりつけ薬剤師が誕生した背景

ここまでは、かかりつけ薬剤師の概要等を解説してきました。
ところで、かかりつけ薬剤師制度はどのような経緯でいつ誕生したのでしょうか。

前提として、薬剤師をかかりつけにすることによって医療現場はどう変わるのか、国が制度を考案した時代背景と、かかりつけ薬剤師制度が医療現場に与えるメリットを、国の視点からわかりやすく解説します。

高齢化社会で包括的医療ケアが必要に

かかりつけ薬剤師制度は2016年に導入された新しい制度です。

制度誕生の背景には日本社会の急速な高齢化があり、個人の医療情報を一元的に管理する仕組みが必要と考えられるようになってきました。特に団塊世代が皆75歳以上になる2025年までを目標に、国は全薬局をかかりつけ化する方針を掲げています。

高齢者は複数の薬を内服するケースが多いため、服薬治療がより安全かつ有効になるよう薬剤師の専門性を高めつつ、同時に患者さん1人ひとりに寄り添いながら管理できる医療を目指すのが制度の概要です。

従来の医薬分業制度では医師の処方した薬を調剤するだけの薬剤師ですが、薬局と薬剤師が「かかりつけ」になると1人の患者さんの医療情報を病院を越えて共有できるようになります。さらに薬剤師が患者の健康や生活を把握することでよりきめ細かなケアが可能になります。

これにより、高齢者の医療を病院から在宅へとシフトできる、という考えが国の構想のベースにあるのです。

これからの薬剤師は単に薬を調剤するだけでなく、患者さん1人ひとりにフォーカスしたチームケアの一員という位置づけになってくるでしょう。

薬価削減の意図も

かかりつけ薬局・薬剤師制度以前は別々の薬局で薬が処方されることもあり、残薬の把握や複数薬の飲み合わせの可否、重複薬の調整が問題になっていました。

今後薬局・薬剤師が一元化することで薬の管理・調整が行いやすくなり、処方の重複の調整や残薬削減ができるようになります。国としては、膨らむ一方の薬価を残薬調整などで削減する意図もありました。

またかかりつけ薬局・薬剤師制度で医療費そのものの削減を図る狙いもあります。

医療をできる限り在宅で受けられるためにも、地域包括ケアシステムに薬剤師を組み込み新たな仕組みの構築が急務と国は捉えました。

今後は在宅医療の観察役・相談役としてかかりつけ薬局・薬剤師が位置づけられていくと考えられます。

かかりつけ薬剤師を持つメリット

ここからは、かかりつけ薬剤師を持つメリットについて説明します。

かかりつけ薬剤師はほかの薬剤師よりも幅広い業務で私たちの生活に関わってきます。 言ってみれば医療機関と私たちとの仲立ちをしてくれる存在です。

この章を読めば、従来の医薬分業制度に比べて薬剤師がもっと身近な存在になっていることに気付くのではないでしょうか。一つずつ具体的に解説しましょう。

ひとりの薬剤師がすべての薬を管理してくれる

これまでは、受診した医療機関ごとに別々の薬局を利用していました。
ここでは、薬局と薬剤師をかかりつけにするメリットについては次の通りです。

  • どの医療機関で処方された薬も一か所の薬局で受け取れるようになる
  • 薬に関する疑問や相談全般に答えてもらえるようになる
  • 薬のみならずサプリメントまでも一緒に管理・指導してくれる
  • 必要に応じて医師に処方について意見を伝えることもある

かかりつけ薬剤師は患者の薬だけでなく健康全般をケアする立場になるため、

「健康全般のアドバイザー」という役割と考えていいでしょう。

夜間や休日でも電話で相談できる

これまでは薬剤師に薬の相談をするには薬局の開局時間内に行うしかありませんでした。

しかし、かかりつけ薬剤師を利用すれば、薬局が閉まっている夜間や休日に困ったことがあったとしてもその場で電話相談ができるようになります。

電話相談は薬のみに限定されず、体調の不安などを相談してもいいでしょう。

かかりつけ薬剤師は必要に応じて患者さんの相談内容や状態を医師に伝え、在宅でも必要な医療やケアを受けられるよう努めています。

薬を自宅に届けてもらえることも

急な病気や高齢などで薬局に薬を取りに行けない方のために、かかりつけ薬剤師は自宅まで薬を届けることもできます。

特に1人暮らしや高齢者だけの世帯では、健康状態の見守り管理が行き届きにくいものです。そこで多職種と連携したかかりつけ薬剤師が必要に応じて自宅訪問し、健康状態の確認を行う場合もあります。

医師・看護師と連携したケアが受けられる

かかりつけ薬剤師は医療機関と連携して、患者さんの健康をトータルで観察・管理してくれる存在、つまりは医師よりも身近な医療サポーターといえます。

もし受け取った薬でわからないこと・不安なことがあった時や、体調が変わった時などもすぐに相談ができ、相談を受けたかかりつけ薬剤師が医師に伝達し、処方や治療の方針を見直せます。

かかりつけ薬剤師を持つデメリット

かかりつけ薬剤師を持つ唯一のデメリットは、患者自己負担がいくらか増えることです。

かかりつけ薬剤師を指名すると、薬を受け取る際に「かかりつけ薬剤師指導料」の加算が付くため、従来より1回の処方箋で自己負担割合に応じて60円から100円くらいの負担増になります。ただこれ自体はあまり大きな負担とはいえないでしょう。

また、かかりつけ薬剤師は1人しか選べないため、もし担当を替えたいとなった場合は、申告すれば替えることができます。

ただ、かかりつけ薬剤師の変更は1カ月単位で行われているため、月内での変更はできません。

かかりつけ薬剤師がいてよかった!町の声を聞いてみた

ここからは実際にかかりつけ薬剤師を持った方たちの感想を紹介します。

多くは「かかりつけ薬剤師がいてくれてよかった」という声でした。実際にどんな場面で助かったと感じたのか、どのように役に立ったのか、

かかりつけ薬剤師はまだ歴史の浅い制度ですが、イメージがしやすいよう頼りにされている実例を挙げていきます。

患者さんの体験談

令和2年度の内閣府世論調査で「かかりつけ薬剤師・薬局を決めていてよかったこと」の問いに対する答えでは次の2つの声が圧倒的に多く、それぞれ約50%を占めていました。

  • 生活状況や習慣などを理解してくれたうえで、薬についての説明などをしてくれたこと 52.4%
  • 服用しているすべての薬の飲み合わせについて確認してくれたこと 46.3%

引用:令和2年度世論調査|内閣府

ほかにも「かかりつけ薬剤師がいてよかった」と感じた実際の声として、薬に関する疑問や心配事に「医師がこの薬を処方した狙いをわかりやすく説明してくれた」、さらには「高齢で大病したあと在宅復帰、かかりつけ薬剤師が折に触れ健康相談に乗ってくれ、訪問ヘルパーを入れてはどうかとアドバイスをしてくれた」など、患者の生活全般を気遣ってくれたという事例もあります。

中には「ちょっと相談に寄っただけなのにきちんと話を聴いてくれた」との声もありました。このように、かかりつけ薬剤師は患者1人ひとりと向き合い寄り添ってくれる存在へと変わったのです。

こんな人にかかりつけ薬剤師になってほしい!

かかりつけ薬剤師の歴史はまだ浅く、制度に対して薬剤師の側からは戸惑いがあるのも事実です。やりがいはあるけれど、夜も電話対応しなければならない負担感や疲労感がましたという声も少なくありません。

そんな中、多くの患者さんから頼りにされるかかりつけ薬剤師も現れています。

数々の実例を見ると、患者さんの立場に立ち頼りにされているかかりつけ薬剤師には次のような共通点があることがわかりました。

  • 患者の健康の全責任を負うという意識
  • 患者に寄り添い思いを聴ける傾聴力
  • 1人ひとりに合わせた対処と説明

かかりつけ薬剤師にまつわる数々のエピソードからは、調剤だけでなく対人面でも精力的に仕事をしている様子が浮かび上がってきます。

患者の声を聞きながら、よく観察をし健康をトータルで管理できる。そんな頼れるかかりつけ薬剤師の需要は今後もますます高まっていくでしょう。

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かかりつけ薬剤師を利用するには?

ここからは実際にかかりつけ薬剤師を利用するにはどうしたらいいかを解説します。

まずは行きつけの薬局にかかりつけ薬剤師の資格を持っている人がいるかどうか、聞いてみるといいでしょう。なじみの薬剤師、話のしやすい薬剤師に声を掛けてみるのも一つの手です。

または薬や医療に関する説明会に参加して、情報収集するのも一つの方法です。

この章ではかかりつけを指名して手続きする方法や、薬剤師の選び方について説明します。

利用するための手続き

かかりつけ薬剤師を利用するには、かかりつけの資格を持った薬剤師の中からお願いしたい人を1人だけ決め、こちらから指名します。

実際には多くの場合、かかりつけ薬剤師の有資格が「担当させていただけますか?」と聞いてくる事が多いようです。

その際「かかりつけ薬剤師指導料に関する同意書」に署名します。

以下に同意書書面の例を挙げましょう。同意書にはおおむね以下の内容が記されています。

表 日本薬剤師会が示したかかりつけ薬剤師指導料に関する同意書の例(一部抜粋)

<<当薬局が実施すること>>

1.安心して薬を使用していただけるよう、患者さんが使用している薬の情報を一元的・継続的に把握します。

2.当薬局で調剤した薬の説明や指導は、薬剤師の○○○○が担当します(かかりつけ薬剤師)。

3.お薬手帳に、調剤した薬の情報を記入します。

4.処方医との連携を図ります。

5.開局時間内/時間外を問わず、お問い合わせに応じます。

6.調剤後も、必要に応じてご連絡することがあります。

7.残薬の整理をお手伝いします。

8.次回から、かかりつけ薬剤師指導料(または、かかりつけ薬剤師包括管理料※)を算定します。

※かかりつけ薬剤師包括管理料は、医療機関で地域包括診療料/加算等が算定されている方が対象です。

引用:『日本がかかりつけ薬剤師の同意書のひな型示す』

薬局によって同意書の内容に若干違いはあるかもしれませんが、このような同意書に署名し、かかりつけ薬剤師を決める手続きは完了します。

かかりつけ薬剤師の選び方

かかりつけ薬剤師にはどんな人を選ぶべきか、迷う方も多いのではないでしょうか。

そこで具体的に、かかりつけにしたい薬剤師を選ぶ際に重視すべきポイントを挙げました。

  • 薬と医療の知識が豊富である
  • 接遇が良い
  • 他職種との連携が図れている
  • どんなことでも相談しやすい
  • ちょっとした変化を気にかけてくれる

かかりつけ薬剤師は薬の専門家であるのみならず、患者さんの健康を観察し聴き出しながらトータルで管理する役割があります。そのため患者さんや周囲に気遣いのできる人を選ぶのがよいでしょう。

そして話を聴いてもらいやすい人柄や、こちらの様子に変化があったときに見過ごさない観察力、洞察力も持ち合わせていることも重要。これまで看護師や介護士といった対人の職種に求められてきた能力・素養を持った薬剤師が理想的といえそうです。

かかりつけ薬剤師は我が家の「ホームサポーター」

これまで見てきたとおり、かかりつけ薬剤師制度で医療と介護を一元的・包括的に管理することにより、一つの窓口で医療と介護両方の相談ができるようになります。

かかりつけ薬剤師は医療を中心とした地域包括ケアシステムのハブともいえる役割を果たす、知識と経験が豊富なスペシャリストです。また同時に1人ひとりの患者に寄り添うケアラーでもあります。

薬のやり取りだけに留まらず強固な信頼関係を築くことができるかかりつけ薬剤師は、今後在宅で健康な長寿生活を送るための心強いサポーターになってくるでしょう。

かかりつけ薬剤師に関するよくある質問

Q.お薬手帳があるからかかりつけ薬剤師はいらない?

A.お薬手帳ですべての薬を管理できていると思われるかもしれません。もし薬局が1か所なら、薬の種類だけでなく個人の体調・体質、薬が合う・合わないという点まで把握しやすくなります。かかりつけ薬剤師は単に薬を出すだけでなく、すべてを把握し適切なアドバイスをしてくれるでしょう。

Q.かかりつけ薬剤師にノルマがあるって本当?

A.確かに「同意書」を獲得するほど薬局が点数を稼げることは事実で、特にチェーン薬局では同意書獲得の数値目標があるともいわれています。しかし患者の側からすれば、知識と経験が豊富で患者に寄り添う薬剤師が増え、そんな薬剤師がかかりつけになってくれることのメリットは大きいでしょう。

何より薬剤師が営利主義で仕事をしているわけではありませんので、ノルマ問題に関してはこちらが気にする必要はないとお考えください。

そのほか日常のヘルスケアなどついて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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