• 認知症
  • 【公開日】2023-02-16
  • 【更新日】2023-03-06

認知症の方の寿命は長い?短い?最後の時に向き合うには

認知症の方の寿命は長い?短い?最後の時に向き合うには

「認知症になると寿命が縮むかもしれない」と不安に思う方も多いと思います。実は認知症に関する研究は多いです。日本だけでなく海外でも研究されており、認知症にかかってからどれくらい生存できるのかなどのデータが公表されています。

そこでこの記事では、認知症になると寿命が縮むのは本当なのか、また認知症の方の最後はどうなるのかをご紹介します。

徳島赤十字病院
監修郷 正憲
所有資格:日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT
専門分野:麻酔科、精神科(心療内科)、 脳神経外科、整形外科,、総合内科、口腔外科など

香川大学医学部医学科を卒業後、同年4月より徳島赤十字病院で研修、2013年より正式に従事する。 専門分野は麻酔科をはじめ、精神科(心療内科)、 脳神経外科、整形外科,、総合内科、口腔外科など多岐にわたる。 著書に「看護師と研修医のための全身管理の本」(2022)などがある。詳しくはこちら

所有資格:一般社団法人 薬機法医療法規格協会 薬機法医療法遵守広告代理店認証
専門分野:化粧品や健康食品における広告表現
職業: 薬機法管理者

2003年からヘルスケア情報サービス事業・治験支援事業を行っている企業にて、主にDTC広告の企画営業に携わる。 4年ほど企画営業を担当後、自社のヘルスケアサイトの運営、製薬会社・健康食品メーカーの記事広告の制作を行うが、この時に薬機法(薬事法)についての知識を学び、広告記事の精査を経験。 2017年退社。現在は臨床研究の支援を行う企業にて研究事務局支援に携わる。東京在住。 現在は本業の傍ら化粧品や健康食品の企業の広告等の薬機法チェックを行う。詳しくはこちら

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認知症は寿命を縮める?

「認知症になってしまうと寿命が縮まるって本当?」とお思いの方も多いと思います。

寿命が縮まるかどうかはさまざまな事柄が関係しているため一概には長い短いとは言えません。しかし、認知症の生存期間に関する研究によるとおおむね5〜12年が生存期間とされています。アメリカの60歳以上を対象とした研究では、認知症(アルツハイマー)と診断された時点で余命が平均5年であると明らかになりました。

また、公益社団法人「認知症の人と家族の会」がおこなった調査では、認知症の介護年数は平均6〜7年とされています。ただこれはあくまで平均値であり、認知症になっても10年以上生存するケースも少なくはありません。

久山町がおこなった研究で認知症と診断された患者の10年間における生存率は以下のようになっています。

アルツハイマー病 18.9%
血管性認知症 13.2%
レビー小体型認知症 2.2%

決して10年以内に亡くなるとは限りません。ただ、認知症の方は認知症を発症していない方と比べ、看取るタイミングが早くなる可能性があります。

参照:『Survival after initial diagnosis of Alzheimer disease

認知症患者の寿命を縮める要因は?

認知症の方の寿命が縮まってしまう要因として、年齢、性別、進行速度の3つが挙げられます。

若い方よりもご高齢の方の方が認知症を発症してからの寿命は短い傾向にあります。身体的機能をはじめとするありとあらゆる機能が低下するため、肺炎や感染症になるリスクも低くはありません。

また、認知症の進行速度によっても寿命は変動します。進行が緩やかなタイプの認知症だと平均以上生存する可能性は高くなりますが、進行が早いレビー小体型になるとその分寿命が短くなってしまいます。

ちなみに、性別に関しては明確な根拠はありません。ただ多くの研究データで男性の方が認知症発症からの寿命は短いとされています。

ほかのケースとしては以下のようなものがあります。

  • 認知知能が衰えてしまい寝たきりとなる
  • 衰弱してしまい食べ物を食べることができなくなる

認知症が原因でさまざまな症状に悩まされ、寿命が縮まってしまうのです。

認知症の末期にはどんな症状がある?

認知症を患った方の多くは「最後はどうなってしまうんだろう」と不安を抱えます。そのため、認知症を発症した方の家族は、本人の気持ちに寄り添ったサポートを行う必要が有ります。

認知症末期になると介護なしでは生活ができなくなるケースがほとんどです。立ちあがる動作すらままならない状態となり、生活に必要な行為の多くを自分ではできなくなってしまいます。最終的には何もできなくなるケースも少なくありません。認知症末期にはさまざまな重篤症状が現れており、以下のような症状が多く見られます。

  • 記憶のほとんどを失う
  • 肉親の判断ができない
  • コミュニケーション能力がなくなる

また、人の話を正常に判断できなくなる場合もあり、人間としての機能を失ってしまうケースも少なくありません。ただ、そういった恐怖を理解したうえで、看病する側が意思疎通を図ったり、コミュニケーションを積極的に取ったりすることが重要です。

さらに末期になると話しかけても反応がない状態になります。感情が現れなくなり、「おはよう」や「こんばんは」などの日常会話もままなりません。ただ、反応がないだけでしっかりこちらの声を聞き取れているケースも多いため、コミュニケーションを欠かさないようにしましょう。決して否定的な話をしてはいけません。

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嚥下障害などが起きる

認知症末期になると筋肉が強張る筋固縮の症状が現れ、嚥下障害などが起きる可能性もあります。筋固縮により関節を動かす機会が減ると、関節が固まる拘縮が発生します。寝たきりの場合は、手足がピンと伸びた形で固まってしまうケースも少なくありません。

ほかにも認知症末期に起きる運動機能の障害には以下のようなものがあります。

  • 嚥下機能が落ちる
  • 尿や便の失禁をする
  • 寝返りを打てない
  • 自力で入浴・排泄・食事ができない

特に飲み込む力が低下する嚥下障害が起きてしまうと、命に関わる事故が発生するケースも多いです。誤嚥や窒息につながるリスクが高くなり、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまいます。

寝たきりになってしまい褥瘡ができる

認知症末期よりもさらに認知症が進行すると「終末期」を迎えます。

終末期になるとほとんど寝たきりとなり、褥瘡の発生率が格段に増加してしまいます。褥瘡は体重で圧迫されている場所の血流が滞り、皮膚の一部が赤くなる・ただれる・傷ができてしまう症状です。ひどい場合は骨や筋肉、腱が見えるほど深くなるケースもあります。栄養状態が悪い、皮膚が貧弱になっているなどの条件が揃っていると、さらに褥瘡になりやすくなります。褥瘡の状態が続いてしまうと以下の病気を患うケースもあるため注意が必要です。

  • うっ血性心不全
  • 骨盤骨折
  • 脊髄損傷
  • 糖尿病
  • 脳血管疾患
  • 慢性閉塞性肺疾患

また、循環不全なども発生し、臨死期に近づいていきます。

参照:『褥瘡について

認知症の方の最後はどうなる?

認知症の方の直接的な死因の多くは「肺炎」です。

身体的機能が低下し感染症のリスクも格段にあがってしまっているため、肺炎以外で亡くなる方が多くいます。また、食べ物を食べる行為ができなくなり、衰弱死するケースもあります。

終末期を迎えたあたりから、認知症の方は思うように言葉をつむげないケースも少なくありません。そのため、最善の治療方法や終末期介護について、家族が考え、決断する必要があります。そうなる前にどういった介護をして欲しいのか、またどういった最後を迎えたいのかを本人の口から聞いておくことが大切です。

本人の意思がないところで家族や医療チームが勝手にあれこれ決めてしまうのはおすすめできません。

アドバンス・ケア・プランニングを検討しよう

認知症の方が思うように言葉を発せなくなったり、意思疎通ができなくなったりする前にアドバンス・ケア・プランニングを検討しましょう。

アドバンス・ケア・プランニングは略して「ACP」と言われ、認知症の方の希望を聞き家族や医療チームが終末期介護や医療について話し合うことをいいます。自分がどのようにして最後を迎えたいのかだけでなく、受けたい医療やなぜその医療を受けたいのかを認知症当事者と家族が話し合います。最終的な意思決定を医療チームと共有することで、包括的なケアが可能です。

認知症当事者が抱える不安や恐怖を完璧に拭い去ることはできないため、「どういう最後を迎えたいか」を前向きに話し合うことが重要です。前向きに話し合うことで認知症当事者だけでなく、家族も納得した状態で終末期を迎えることができます。

アドバンス・ケア・プランニングで寿命と向き合うメリットとは

認知症当事者から本人の最後について話してもらうのは少し酷だと感じる方もいるかもしれません。しかし、アドバンス・ケア・プランニングで認知症当事者と向き合うことには以下のようなメリットがあります。

  • 医療チームが最適な医療を施してくれる
  • 望まない医療や病院死を避けられる
  • 終末期の過ごし方にゆとりができる
  • 認知症当事者・家族の満足感が高まる

アドバンス・ケア・プランニングで寿命と向き合う最大のメリットは「自分の人生に責任を持てる」ことです。認知症当事者が家族や医療チームが「こうしましょう」と決定した内容に従う必要はありません。本人が「こうしたい」と決めたことを家族や医療チームに共有し、全員が納得することで「自分の人生は自分が決めた」と責任を持つことができます。

また、本人が自分の人生について決めることで、望まない延命治療や病院死を回避することもできます。家族が勝手に「まだ生きたいと思っているだろう」と本人が望まない延命治療を医療チームにお願いしてしまうケースもありますが、これはお互いが望んだ最後ではないでしょう。

認知症の方を施設に入れると寿命が縮む?

認知症の方の介護が環境的に厳しく、どうしても施設に入れないといけないご家庭もあるでしょう。また、認知症が進むにつれて介護すべき範囲も広がっていくため、家族の負担も増えていきます。

しかし「認知症の方を施設に入れると寿命が縮む」との噂をご存知でしょうか。施設に入れたら症状が悪くなるという噂を聞く場合もあるのではないでしょうか。施設に入れたいと考えていても、このような噂を聞くと、施設入所を躊躇う方が多いと思います。

いったいなぜ、施設に入れると寿命が縮むと言われているのか、その理由と施設だからこそ得られるメリットを紹介していきます。

認知症が急激に進み寿命が縮むと言われる理由

そもそもなぜ「施設に入ると寿命が縮む」と言われているのでしょうか。理由は2つあります。

一つ目の理由は「環境の変化」です。認知症の方は変化が苦手です。環境が変化すると不安感や緊張感を持ち、症状が一時的に悪化してしまいます。自宅では落ち着いていた方が施設に入ると状態が一時的に悪化するケースも多いため、寿命が縮むと誤解されているのです。

二つ目に理由は「服薬の調整」です。施設に入る際に、服薬を調整されるケースも多く、一時的に状態が不安定になる場合があります。そのため、環境の変化と同じように、認知症が進行した、寿命が縮んだと勘違いされてしまうようです。

このように、施設に入所すると一時的に状態が悪化する可能性があります。しばらくすると状態が安定し、施設に馴染むため、心配する必要はありません。

施設だからこそのメリットや寿命と向き合う大切さとは

施設だからこそできる認知症の方へのケアも多くあります。寿命を縮めるとの噂とは裏腹に、認知症の進行を遅くできるかもしれません。そういったメリットを認知症当事者に伝えることが大切です。

施設に入るメリットには以下のようなものがあります。

  • 新しい人との関わりができる
  • 無気力状態になりにくい生活リズムをつくりやすい
  • オールインワンなケアを受けられる
  • 専門的なケアを受けられる
  • 24時間介護を受けられる体制が整っている

施設内には、認知症に悩む方々も少なくはありません。当事者同士でしかわからない悩みを話し合い、情報できれば、自ずとコミュニケーションを取る時間も増えていきます。さらに、自分で考える時間も増えるため、認知症の進行の緩和が可能です。施設ならではの総合的なケアを受けられるため認知症当事者だけでなく、家族も安心できるのがポイントです。

施設に入れると寿命が縮むとの噂に惑わず、施設の本格的なケアを受けてみてはいかがでしょうか。本人にあった施設を探してみましょう。

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認知症の方の寿命についてのまとめ

認知症が一気に進行すると、さまざまな機能が低下し、結果的に寿命を縮めてしまいます。認知症終末期には、寝たきりとなり最終的に衰弱死してしまう方も少なくありません。

そうなる前に本人の意思を確認しておきしましょう。

  • どのように最後を迎えたいのか
  • どういった医療を受けたいのか
  • 医療を受けたい理由
  • 終末期はどう過ごしたいのか

上記を確認し、話し合いを行うことで、お互いが納得できる結論を見つけられます。お互いに納得できれば、それぞれの安心感に繋がり、負担の軽減も可能です。また、認知症当事者の望んでいる最期の迎え方や医療を受けたいと望んでいるのか、それとも望んでいないのかなど聞くのはその方の人生と向き合ううえで、非常に重要な意味を持ちます。必ずアドバンス・ケア・プランニングを行なってください。

アドバンス・ケア・プランニングはできるだけ早く行うことをおすすめします。認知症当事者がしっかり話せていたとしても、頭を使って話せているとは限りません。コミュニケーション能力が著しく低下している場合は会話のキャッチボールが難しくなります。本当に本人が望んでいる最後を聞くには、できるだけ早めにアドバンス・ケア・プランニングを行う必要があります。

「望まない医療」を受けて介護者も認知症当事者もハッピーではない状態になるよりも、アドバンス・ケア・プランニングによりお互いが納得した形で終末期を迎える方が穏やかな最期にふさわしいのではないでしょうか。

認知症の方の寿命が尽きる前にできる限りをしてあげよう

認知症になったからといって寿命が縮むとは限りません。しかし、認知機能が低下し続け、末期の状態になると、食事も摂れなくなり衰弱する場合があります。施設に入ったとしてもその不安が完璧に拭われることはありません。

ただ、施設では家族だけではできないような包括的なケアを行えます。認知症が進行すると徐々に物忘れが激しくなったり、幻覚や幻聴などの症状に悩まされることも多くなります。今まで経験したことのないような症状に専門的な知識がない家族が対応するのは不安があります。専門的な知識がある施設職員が対応した方が結果は良くなるでしょう。

また、認知症が進行し意思の疎通ができなくなる前に、本人の希望を聞いておくことが大切です。どのように最後を迎えたいのか、どういった医療を受けたいのか、終末期はどう過ごしたいのかを確認していきましょう。

認知症が原因で寿命が縮まるのでしょうか?

寿命が縮む点や認知症による症状のほか、個人のもつ病などによっても異なります。認知症の生存期間に関する研究によると生存期間はおおむね5〜12年とされています。一概に寿命が縮むとは言えません。詳しくはこちらをご覧ください。

介護の終わりを考えたら苦しいのですがどうしたらいいですか?

認知症の方が亡くなるのは避けられません。アドバンス・ケア・プランニングにより、最期とどのように向き合っていくかを話し合ったうえで、気持ちの決着をつけることが大切です。詳しくはこちらをご覧ください。

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