• 認知症
  • 【公開日】2023-02-17
  • 【更新日】2023-02-20

認知症の方が帰宅願望をもつのはなぜ? 対処法と環境について解説!

認知症の方が帰宅願望をもつのはなぜ? 対処法と環境について解説!

認知症の症状の一つに帰宅願望があります。「認知症の親が昔住んでいた家に帰りたいと言っている」「家にいるのに帰りたいと言う」こんな悩みを持つ方も少なくはありません。

酷く泣いたり、攻撃的になったりする場合もあります。

この記事では、帰宅願望をもっている認知症の方への対応方法を解説します。帰宅願望が起きてしまう理由や帰宅願望が起きにくい環境づくりについても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

名古屋大学医学部付属病院
監修竹内 想
専門分野:皮膚科、神経内科、総合内科、呼吸器内科など

国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。 専門分野は皮膚科をはじめ、神経内科、総合内科、呼吸器内科など多岐にわたる。 現在は主に皮膚科医・産業医として勤務。詳しくはこちら

所有資格:一般社団法人 薬機法医療法規格協会 薬機法医療法遵守広告代理店認証
専門分野:化粧品や健康食品における広告表現
職業: 薬機法管理者

2003年からヘルスケア情報サービス事業・治験支援事業を行っている企業にて、主にDTC広告の企画営業に携わる。 4年ほど企画営業を担当後、自社のヘルスケアサイトの運営、製薬会社・健康食品メーカーの記事広告の制作を行うが、この時に薬機法(薬事法)についての知識を学び、広告記事の精査を経験。 2017年退社。現在は臨床研究の支援を行う企業にて研究事務局支援に携わる。東京在住。 現在は本業の傍ら化粧品や健康食品の企業の広告等の薬機法チェックを行う。詳しくはこちら

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認知症の方が帰宅願望を示す理由

​​帰宅願望とは、認知症の行動・心理症状の一つです。「帰りたい」と激しく訴えたり、実際に一人で帰ろうとしたりする様子が見られます。

また、自宅で過ごしているのに「家に帰りたいです」と言い出すケースも少なくはありません。必ずしも現在の住居に帰りたいわけではなく、故郷や両親、兄弟のもとを指す場合もあります。

帰宅願望を示す理由は以下の3つです。

● 認知症の症状

● 夕暮れ症候群の影響

● 環境による不安

これらがなぜ帰宅願望と関係しているのか、詳しく解説していきます。

参照:『認知症介護情報ネットワーク|3.帰宅願望場面における認知症ケアの考え方

認知症の症状

認知症による記憶障害、見当識障害などにより帰宅願望が起きると考えられています。

そのほか、理解力や判断力が低下するために、今いる場所がどこなのかわからなくなってしまい、「家に帰りたい」衝動が起きる場合も多いです。

記憶障害により、家族などの身近な人物を忘れてしまうため、気づいたときに「知らない方が家ではないところに連れてきた」と認識するケースもあります。

夕暮れ症候群の影響

夕暮れ症候群は、夕方や夜間などに「帰りたい」と言い出したり、気持ちが落ち着かず徘徊を始めたりする行動です。混乱しやすくなるほか、認知症の症状が悪化する傾向があります。

夕方は、学校や会社から家に帰る時間です。長年の習慣もあり、認知症の方も夕方になると家に帰りたい気持ちが芽生えると言われています。遠くから嫁いで来た方も、「故郷に帰る」と帰宅願望が出やすいです。

また、記憶力の低下と見当識障害により、感覚が子ども時代に戻っている場合があります。家にいても「帰りたい」と訴えるのは、小さい頃住んでいた家に帰りたいと望んでいるからかもしれません。

環境による不安

帰宅願望は安心できる環境を求める気持ちの表れです。そのため、慣れない場所や環境にいる場合、気持ちが落ち着かず帰りたがる場合も多いです。

認知症の方は変化が苦手です。自宅の模様替えをしただけで、「ここは自分の家ではない」と考えてしまい、自分の家を探し始めるケースもあります。

また、周囲の方があわただしくする姿を見るだけで、認知症の方の気持ちが不安定になる場合もあります。帰宅願望には、場所だけでなく、人や雰囲気も関係しているといえるでしょう。

帰宅願望の介護では、認知症の方が自分を受け入れてもらえる、安心できると思えるような環境を作る必要があります。

 

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帰宅願望が強い認知症の方を守るために

帰宅願望自体は悪いものではありません。しかし、一人で出歩いてしまう点には注意が必要です。

帰宅願望により徘徊が常習化してしまうかもしれません。認知症により判断力が低下しているため、事故にあったり、怪我をしたりする危険性もあります。

徘徊に対し、有効的な対策は以下の4点です。

● 玄関にベル・センサーなどを取り付ける

● GPSを持たせる

● 地域の方と連携する

● 役割や趣味を提供する

それぞれについて解説します。

玄関にベル・センサーなどを取り付ける

認知症の方が徘徊をしないように、玄関の扉にベルやセンサーを取り付ける方法があります。ベルやセンサーを設置すると、認知症の方が家を出ると音が鳴るため、家族の方が気付きやすいです。

工事不要で簡単に取り付けできるものも多く、導入しやすい特徴があります。

ベルのほかに、マットを踏むとセンサーが反応するタイプのものもあります。しかしマットに電源コードがあるため、引っかかって転倒しないよう工夫が必要です。

GPSを持たせる

認知症の方が外に出てしまってもいいように、GPSを内蔵した時計や靴、ブレスレットをプレゼントする方法もあります。

しかし、プレゼントした物自体を失くす可能性があるため、贈る手段や贈る物の種類を考えなくてはなりません。

靴の中にGPSが内蔵されているタイプ

一定距離を離れると通知が送られるものもある

腕時計 GPSだけでなく、温度や湿度を把握できるものもある

緊急時に第三者へ連絡が通知する機能付きのものもある

ブレスレット GPS搭載はおしゃれなデザインのものもある

肌ざわりよい素材でできているものもある

しかし、GPSを内蔵したグッズをプレゼントしても、本人がうまく使えない可能性があります。

普段身に着けている服や持ち物などに取り付けるタイプもあるため、認知症の方の行動パターンに合わせてアイテムを考えましょう。

地域の方との連携

予め近所の方や地域の方と連携が取れるように協力をお願いすることも大切です。万が一、徘徊した時に、自宅へ連れてきてくれたり、連絡をしてくれたりしてもらえる場合もあります。また、持ち物に名前と連絡先を書いておくと、誰かに保護してもらった際、スムーズに対応できます。

また、認知症カフェなどへ参加して、地域住民の方と関わりを作る機会を持ちましょう。認知症カフェは、認知症の方やご家族、地域住民、介護・福祉の専門家などが集まる場所です。

おしゃべりやお茶などを楽しめ、認知症について勉強もできます。介護ストレスを軽減でき、地域の方や介護職の方と接点を持つにはうってつけです。

参照:『厚生労働省|認知症カフェ

役割や趣味を提供する

認知症の方に役割や趣味を提供するのも大切な関わりの一つです。脳の活性化などにつながり、認知症の進行緩和も期待できます。お喋りのきっかけにもなるため、趣味を提供し一緒に楽しむのもよいでしょう。

また、役割を与えるのも居場所を提供できる方法の一つです。「ここじゃないとできない」「自分じゃないとできない」と使命が生まれるため、「帰る意識」から「居る意識」に変わるかもしれません。

認知症で帰宅願望が強い方への対応の仕方

認知症で帰宅願望が強い方も多くいます。「家に帰りたい」「仕事が終わったから帰らないと」と帰宅願望を示したとき、適切な対応を行わないとかえって症状が悪化してしまうため注意しましょう。

具体的には、次のような対応が望ましいです。

● 帰りたい気持ちを受けとめる

● 話題を変える

● 間違いを指摘・否定しない

どのように対応するのか詳しく解説していきます。

帰りたい気持ちを受け止める

認知症の方が「帰りたい」と言う場合は、その気持ちを受けとめてあげましょう。また、認知症の方が感じている不安や寂しさを取り除く努力が大切です。

反対に、誤魔化しや嘘は、認知症の方もわかるため絶対にしてはいけません。また、帰りたい気持ちを無視するのもやめましょう。記憶が過去に戻っている場合、「知らない方(ご家族)のせいで、帰らせてもらえない」と不安を煽ってしまう可能性があります。

認知症の方に、「ここがあなたの家だ」「あなたの居場所だ」とわかるように環境を整えてあげるのも大切です。認知症の方のお部屋があるのなら、ドアに名前を書いた札を貼ってあげるのも居場所づくりの方法です。

話題を変える

認知症の方の「帰りたい気持ち」を受け止めたうえで、話題を展開させる方法もあります。

例えば、「ご自宅はどちらですか」「ふるさと(故郷)はどちらですか」と言った内容で膨らませていくと「帰りたい」気持ちから、「おしゃべりが楽しい」「昔話が楽しい」気持ちに変わる可能性があります。

また、「お迎えが来るまで一緒に待ちませんか?」とお茶を出しながら気を紛らわせてあげる方法も効果的です。

間違いを指摘・否定しない

認知症の方が帰りたいと言った場合に、「ここが家だよ」「どこに帰るの?」と指摘してはいけません。あくまでも、認知症の方の思いを受けとめてあげる姿勢が大切です。帰りたいと言う理由や、帰りたいと思わせてしまう理由、その目的や思いに気づけると、受け答えの正解が見えてくるかもしれません。

また、認知症の方が家を出てしまったとき、自分も一緒についてくのも効果的です。引きとめると、邪魔をしたと思ったり、逆に逃げ出そうとしたりする可能性があります。

認知症の方の行動を受け入れるのも一つの方法といえるでしょう。歩くと体力を使うため、徘徊衝動が抑えられる可能性も高いです。気のすむまで歩いてもらってはいかがでしょうか。

 

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認知症の方の帰宅願望を弱くする環境づくり

認知症になった方が帰宅願望を抱く場合、安心できるような環境を整えてあげる工夫をしていきましょう。帰宅願望は、不安や寂しさなどがきっかけで起きるケースが多いです。認知症の方の気持ちに寄り添って一緒に「帰りたい」気持ちに向き合ってあげましょう。

具体的には次のような場所づくりが大切です。

● 「居場所」を提供する

● 不安を解消する場所

● 落ち着ける環境を整える

● 生活環境を尊重した場所

それぞれの環境づくりについて詳しく解説します。

落ち着ける環境を整える

本人が落ち着けるような環境を整えるには、雰囲気を整えたり、本人が安心できるように接したりすることが非常に重要です。

もし、認知症の方がグループホームなどの施設にいる場合、施設の方と相談をしながら人数を変えたり、席を変えたりする工夫をしてもらいましょう。認知症の方の状況などを踏まえて相談することが大切です。

また、自宅でも落ち着ける環境づくりをするために、ゆっくり会話するのもよいでしょう。「ここに居てもいい」「ここが自分の居場所」と思える居場所を作れると「帰りたい気持ち」を抑えられるかもしれません。

生活環境を尊重した場所

認知症の方の意識や記憶が過去に戻っている場合や、介護施設に入居し始めたばかりの場合、今まで身近にあったものや環境がない点で不安に感じる可能性があります。そのため、これまでの生活環境・生活習慣に応じた環境を整えましょう。

環境を整えるアイデアは、多くあります。幼い頃に大切にしていた物を置いたり、今までの暮らしで馴染みのある物を置いてみたりする方法があります。幼い頃に戻っている場合、懐かしさよりも、大切なものが置いてあるかどうかがポイントです。会話をする中で認知症の方の大切な物が何かを探っておきましょう。

認知症の方にとって、馴染みの物や思い出の物を置いておくと、本人の安心につながります。不安や心配の気持ちを取り除いてあげる工夫も大切です。

認知症の方の帰宅願望に対応するコツ

認知症の帰宅願望に対応するコツは、「帰宅したい気持ち」を受けとめることです。頻繁に帰宅願望が出る方は介護者に大きな負担がかかります。

「帰宅したい気持ち」を受け止めようと思っても難しい場面も多いでしょう。その場合、次の3点について意識をしましょう。

● 帰宅願望を異常な行動や問題とは思わない

● 行動の制限や抑制はしない

● 気持ちを無視しない

それぞれが、どのように大切なのか解説します。

帰宅願望を異常な行動や問題とは思わない

帰宅願望を抱くのは認知症の方ばかりではありません。認知症ではない方であっても自宅に居ながら「帰りたい」と思うときがあります。「帰りたい」と思ってしまう理由はさまざまですが、主に寂しさやストレスなどの心理的症状によって引き起こされています。

そのため、帰宅願望自体は異常な行動ではないのです。帰宅願望が強い認知症の方は、寂しさや不安、ストレスを感じている状態かもしれません。身近にいる家族で認知症の方の思いをしっかり受けとめてあげましょう。

また、帰宅願望を問題行動とは思わないよう意識する必要があります。帰宅願望から徘徊につながる場合がありますが、徘徊によって本人に被害が及ぶことが問題なのであって帰宅願望自体に害はありません。帰宅願望を悪いものと思わず、相手の気持ちを受け入れていきましょう。

参照:『認知症介護情報ネットワーク|3.帰宅願望場面における認知症ケアの考え方

行動の制限や抑制はしない

認知症の方が「帰りたい」と訴えたからといって、行動の制限や抑制をしてはいけません。認知症の方に対して「だめ」「やめてください」と、理由もなく行動を制限すると、納得ができず混乱を招いてしまいます。もし家や施設などを出ようとした場合は、散歩に出かけたりお茶を出したりしましょう。

ある施設では、帰宅願望が強い方のために、施設の前に偽物のバス停を設置しています。認知症の方は、家に帰ろうとバスを待ちますが、5分ほど経つと「なぜ自分がバス停にいるのか」を忘れてしまいます。忘れたタイミングで声をかけると、スタッフの誘いに応じて施設に戻ってくるそうです。

このような、本人の気持ちと特性を活かした対応を模索してみましょう。

気持ちを無視しない

認知症の方を傷つけないためには、気持ちを無視しないことが大切です。多くの方が、ついその場限りの対応をしてしまいがちです。「今日は遅いので明日にしましょう」などと誤魔化したり、外に出ないようにしてみたりといった行動は、一時的な対応にすぎません。すぐに再発してしまいます。

帰りたい気持ちを受け止め、認知症の方の心に寄り添いましょう。そのためには、どうして「帰りたい」と思っているのか話をして理由を探る必要が有ります。

会話の中で、認知症の方が安心して過ごせるような信頼関係を築けるよう意識しましょう。

「自分の居場所がない」と思っている可能性もあります。その際は、認知症の方の居場所や環境を整えてあげましょう。役割を持って過ごしてもらうのも効果的です。

認知症の方が帰宅願望をもっても問題視せず受け入れてあげよう

帰宅願望とは、認知症の症状の一つです。「帰りたい」と訴えたり、実際に帰ろうとしたりするケースが多くみられます。また、自宅で過ごしているのに「家に帰りたい」と言い出すケースも少なくはありません。

帰宅願望は安心できる環境を求める気持ちの表れです。その気持ちを受けとめてあげましょう。帰宅願望を弱くするには、本人の話を聞き、環境を整える必要が有ります。

場所だけではなく、人間関係や雰囲気にも配慮が必要です。まずは本人の話を聞き、どうして帰りたいと思っているのか理由を探ってみましょう。

認知症の方が帰宅願望をもつのはなぜ?

認知症の症状や夕暮れ症候群、環境による不安が原因と言われています。寂しさや不安、ストレスなど精神的な要因も深く関係していま詳しくはこちらをご覧ください。

認知症の方が帰宅願望を訴えてきたら?

まずは本人と話をして、どうして帰りたいのかを探りましょう。認知症の方の想いを受け止めてあげたうえで、居場所を提供したり、ほかの仕事などの役割を提供したりして、「あなたが帰る場所はここなのだ」と伝えることが大切です。詳しくはこちらで解説しています。

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