• 認知症
  • 【公開日】2023-02-21
  • 【更新日】2023-05-10

【理由と対処法】認知症の方はなぜ食事拒否をする?

【理由と対処法】認知症の方はなぜ食事拒否をする?

「最近ちゃんと食事をしてくれない」「好きなものを用意しても嫌がって食べない」

認知症の方は、食事を出しても拒否することがあります。介護する側にとっても、栄養を取ってもらいたくて用意したのに、寂しいことですね。

しかし、決して嫌がらせや悪ふざけではなく、認知症特有の理由があります。

今回の記事では、認知症の方が食事を拒否する理由を知り、理解・対処の方法を解説しています。

最後まで読んで、今後の介護の参考にしてください。

精神医学教室 病院助教(病棟医長)
所有資格:精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医・認知症診療医など
専門分野:精神科臨床、精神病理学など

山梨大学医学部在学中は、ライフサイエンス特進コース(現:研究委養成プログラム)に入り、培養細胞を用いたエピジェネティクス研究に従事。同大学卒業後は、精神病理学を学ぶため、自治医科大学附属病院初期研修医を経て、自治医科大学精神医学講座へ入局。精神科臨床や疫学的研究を並行して行いつつ、精神病理学の論文投稿も行っている。近年では、1873年にErnest Charles Lasègueが報告したAnorexie Hystériqueを導きの糸として、non-fat phobic anorexia nervosaや中年期摂食障害に関する精神病理学的考察を進めている。詳しくはこちら

所有資格:一般社団法人 薬機法医療法規格協会 薬機法医療法遵守広告代理店認証
専門分野:化粧品や健康食品における広告表現
職業: 薬機法管理者

2003年からヘルスケア情報サービス事業・治験支援事業を行っている企業にて、主にDTC広告の企画営業に携わる。 4年ほど企画営業を担当後、自社のヘルスケアサイトの運営、製薬会社・健康食品メーカーの記事広告の制作を行うが、この時に薬機法(薬事法)についての知識を学び、広告記事の精査を経験。 2017年退社。現在は臨床研究の支援を行う企業にて研究事務局支援に携わる。東京在住。 現在は本業の傍ら化粧品や健康食品の企業の広告等の薬機法チェックを行う。詳しくはこちら

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なぜ認知症の方は食事拒否するのか

認知症の方が食事を拒否する理由としては以下の5つが挙げられます。

  • 失認
  • 失行
  • 嚥下機能の低下
  • 口腔トラブル
  • 居心地の悪い環境

それぞれについて詳しく解説して行きます。

認知症で食事拒否をする理由その①:失認

認知症特有の症状の一つに「失認」というものがあります。失認とは、認知機能の低下が原因で、目の前に置かれたものを認識できなくなる症状です

この症状が発症すると、たとえ大好物を置かれても、食べ物であることすら分からなくなります。

どれだけお腹が減っていても、食べ物であると認識できなければ食べてくれないでしょう。食事そのものが認識できなくなる「失認」が、認知症の方が食事を拒否する1つ目の理由です。

認知症の方が食事拒否をする理由その②:失行

次の理由も認知症特有の、「失行」という症状があります。失行とは、今まで普通にできていたことができなくなることで、食べ方がわからなくなっている状態です

お箸で食べ物を取って口まで運ぶ、子供でもできそうなことさえできなくなっています。

この症状では、特定の食べ物だけ食べないこともあり、理解されにくい症状でもあります。できる動作とできない動作もあるので、介護する側もすぐに怒ったりせず落ち着いて対処してあげてください。

認知症の方が食事拒否をする理由その③:嚥下機能の低下

次の理由は、高齢者共通で起こりうる「嚥下(えんげ)機能の低下」です。嚥下とは、ものを飲み込む行為のことで、嚥下機能が低下すると上手く飲み込めなくなります

高齢者の方が、食事時に突然せき込む光景を見かけたことはあるでしょうか。

高齢者共通の現象とはいえ、認知症の方にとっては食べる度に苦しい思いをする食事の時間が嫌な時間として認識してしまいます。

「ゆっくり落ち着いて食べる」といった、行動の抑制が難しい認知症の方には、嚥下機能の低下も食事を拒否する理由になります。

認知症の方が食事拒否をする理由その④:口腔トラブル

口腔トラブルとはどんな状態でしょうか。口腔とは口の中のことで、食事摂取に適さない状態を含めた構内環境の悪化を、口腔トラブルといいます

高齢者には、入れ歯の方も多く、上手く噛み合わせができていないことがあります。入れ歯が合っていない、食べかすが挟まり痛みがある、手入れができておらず食べ物の味を損ねている。加えて、言葉で伝えることが難しい認知症の方は、食事を拒否することで口腔トラブルを伝えようとしています。

認知症の方が食事拒否をする理由その⑤:居心地の悪い環境

家族団らんの和やかな雰囲気が、居心地の悪い環境と想像できるでしょうか。認知症の方の中には、五感が異常に敏感になっている方がいます

「テレビの音が気になって仕方ない」「照明が明るすぎる、眩しい」「照明が暗すぎる、怖い」など、和やかな雰囲気の中で、居心地の悪い思いをしていることがあります。

居心地の悪さが不快感につながり、食欲まで失い食事を拒否するのが認知症の症状です。

また認知症の方に対応した老人ホーム・介護施設をお探しの際にはケアスル介護で相談してみることがおすすめです。

ケアスル介護では全国約5万もの施設から、入居相談員がご本人様のニーズに合った施設をご紹介しています。

「納得のいく施設選びをしたい」という方は、まずはぜひ無料相談をご利用ください。

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認知症の食事拒否には種類がある

一般的な食事を拒否する理由を解説しましたが、認知症には種類があり種類によって拒否する理由も変わってきます。介護者にとっても認知症の種類と特徴を知ることが、食事拒否をより理解することにつながります。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は65歳以上の方に一番多い認知症の種類で、進行性の病気です。

特徴として「新しいことが覚えられない」「時間・場所が認知できなくなる」「今体験したできごとを覚えていない」などになります

脳の神経細胞が減り、小さく委縮することで症状が現れます。病状の進行は比較的緩やかで、工夫次第で自立した生活が可能です。また、薬やリハビリで進行を遅らせることも可能なタイプの認知症です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、あまり聞きなれない病名ですが、実はアルツハイマー型認知症に次いで2番目に多い認知症です。認知機能の状態に特徴があり、良い状態と悪い状態が波のように変化して、健常者のようにしっかりしているときもあるため、認知症と理解してもらえない方もいます

しかし、症状が進むと、筋肉がこわばるパーキンソン症状を発症したり、存在しないものが見える幻視症状が出ることさえあります。初期段階こそ、分かりにくいレビー小体型認知症ですが軽視できない種類の認知症です。

脳血管性認知症

レビー小体型認知症が2番目に多いと紹介しましたが、疾患者の数はほぼ同数に近い認知症に、脳血管性認知症があります。脳の血行障害が原因で発症する認知症で、脳のどこの部分に障害を負ったかで発症する症状が変わります

症状が一部しか認められなかったり、時間経過によって症状に波がある「まだら認知症」と呼ばれるものがありますが、まだら認知症は脳血管性認知症の症状の一つです。

脳卒中を発作後に脳血管性認知症を発症することがあり、階段を下るように悪化してしまいます。しかし、血圧のコントロールを厳格に行い、脳出血の再発防止ができれば、予後の改善は期待できます。

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認知症の方は食事拒否以外にも傾眠の傾向がある

傾眠とは、ウトウトとうたた寝している状態を指します

認知症の方が食事を拒否すると、思わぬ弊害を生むことがあります。認知症の方は時間の認識ができない方も多く、昼夜逆転している方も少なくありません。

食事拒否をされている方は体力も低下しています。時間の認識がないことに体力低下が加わり傾眠の傾向につながっています。

傾眠の様子

傾眠は、一見すると単なる「よく寝る」状態にも思えます。たとえ食事を拒否されても、寝ている間の介護は楽に感じるかもしれません。しかし、傾眠は危険なサインが潜んでいることがあるので、注意してください。

硬膜下血腫や内臓疾患が原因になっていることがあり、放っておくと意識障害を引きおこす危険さえあります。しかし、介護者には単なるうたた寝か傾眠かの判断はむずかしいでしょう。

昼間に寝ている姿が増えるなら、医療機関に相談することをおすすめします。

傾眠は対策がある

食事拒否に傾眠まで重なると、頭の痛い問題ですが、傾眠には対応策があります

医療機関に相談することが第一ですが、家庭内でもできる傾眠対策があるので是非試してみましょう。

効果的なのは、笑顔で話しかけてあげることです。認知症の方は、孤独感に苛まれている状況が少なくありません。「ちゃんと見てますよ」と伝えることで、ストレスの軽減にもつながります。

対処法は他にもありますが、直ぐに実行できて簡単な方法として、最初に試してください。

認知症の方が食事拒否して心配なこと

認知症の方が食事拒否して、一番心配なことは何でしょう。おそらく介護者にとっては、今目の前の食事を取ってくれないことが、一番大きな心配事でしょう。

しかし、食事を拒否する期間が長くなるほど、もっと大きな深刻な状態になる可能性があります。

食事をしている高齢者でさえ、運動機能の低下から、体重は減少する傾向があります。ましてや、認知症を患っている方が食事拒否を続けるとどうなるでしょうか。

身体機能が著しく低下して、排泄の失敗が増え意思疎通が困難になり、寝たきりになるリスクが高まります。

そういった自体を招かないためにも、認知症の方が食事拒否したときの対処法を考えてみましょう。

認知症の方が食事拒否した時の対処法

食事拒否の理由を解説してきましたが、どれも医学的な見地からみた解釈で、本当の理由は本人でさえ分かっていません。

ここからは、食事拒否をされないための、試す価値のある対処法を紹介します。

好みに合わせた味や見た目

栄養バランスより、好きなものを食卓に出してみましょう。食べたい物、大好物と思えるものが食卓に出ることは健康な人でも嬉しいものです。また、見た目が綺麗な食べ物は食欲を掻き立てるのに大変有効です。遊び心も加えて、少し工夫してください。

楽に飲み込める食材を選ぶ

高齢者、さらに認知症の方は、嚥下力と併せて咀嚼力(噛む力)も低下しています。通常の献立より細かく刻んで、一口サイズにして食べやすくしてみましょう。元気であれば快感である、噛み切ることも認知症の方には食べにくいだけかもしれません。

さらに、ゼリーのような食材なら、噛み切る必要もなく自然に喉を通ります。「楽に飲み込める食材」は試す価値ありです。

口腔ケアをしっかりしてあげる

もし、しっかり食べてもらえたなら、次の食事に備えて口腔ケアをしてあげましょう。どんな食材でも、口の中に食べくずが残ったままでは後味が悪くなります。

口腔ケアは口の中がさっぱりして、気分まで良くなります。

無理強いはかえって食べなくなる

一番大事な工夫かもしれません。どれだけ食事拒否されても、決して無理強いすることは避けてください。お腹が減っていようとも、強制的な食事が美味しい訳がありません。

今食べて欲しい気持ちが、強くなり過ぎないようにしないと、逆効果になってしまいます。

食事形態の変更などに対応している老人ホーム・介護施設をお探しの際には、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。

ケアスル介護では、入居相談員が施設ごとに実施するサービスや立地情報などをしっかりと把握した上で、ご本人様に最適な施設をご紹介しています。

「身体状況に最適なサービスを受けながら、安心して暮らせる施設を選びたい」という方は、まずは無料相談からご利用ください。

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まとめ:認知症の方が食事拒否をした時は

せっかく用意した食事を拒否されれば、介護する側の疲労感も増すでしょう。しかし、認知症の方も食べたいのに拒否してしまう、自分自身に戸惑っています。

できる限り認知症の特徴が理解できれば、たとえ食事を拒否されても、余裕のある介護につながっていきます。

認知症の人はなぜ食事を拒否する?

理由としては大きく分けて以下のようなものがあります。①失認 ②失行 ③嚥下機能の低下 ④口腔トラブル ⑤居心地の悪い環境 詳しくはこちらをご覧ください。

認知症の方が食事拒否した時の対処法は?

対処法としては以下のようなものが挙げられます。①好みに合わせた味や見た目で提供する ②楽に飲み込める食材を選ぶ ③口腔ケアをしっかりしてあげる ④無理強いをしない詳しくはこちらをご覧ください。

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