「グループホームって追い出されることもあるの?」「苦労して入ったのに追い出されたくない」グループホームへの入居を考えている要介護者のご家族で、このような心配をされている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、グループホームを追い出されてしまう11個の事例を紹介します。あらかじめ退去事例を知っておけば、グループホームでのご家族の生活を上手にサポートできるようになります。
また万が一、退去勧告を受けてしまったときの対処法も解説しています。本記事を通じて、グループホームに関する知識を蓄えておき、いざというときに慌てないよう準備しておきましょう。
グループホームから追い出される可能性は「ある」
さまざまな理由から、グループホームを強制的に追い出される可能性はあります。
住み慣れたグループホームから退去させられるのは、本人や家族からすると納得がいかないかもしれません。しかし、施設からの申し出が、必ずしも不当とは言えないのです。
グループホームへ入居する際に、入居契約書と重要事項説明書を交付され、退去に関する要件も書面に記載がある場合がほとんどです。もし、書面に書いてある退去要件に当てはまるのなら、契約書の効力に従って施設側が退去を求めたとしても、違法にはなりません。
さらに、退去勧告があったにもかかわらず、無視して居続けると、施設から法的手段で訴えられる可能性もあります。
ただし、本当に退去要件に当てはまるかどうか、判断が難しい事例もあるのも事実です。本人側と施設側で見解が違う場合も多いため、時間をとって話し合いをするのも大切でしょう。
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グループホームから追い出される11の具体的事例
実際に、グループホームから退去勧告を受けたのは、以下のような事例です。
- 事例1:ほかの入居者やスタッフに対する暴言や暴力などの迷惑行為をした
- 事例2:共同生活が難しいと判断された
- 事例3:自傷行為が頻発する
- 事例4:グループホーム内では医療処置に対応できない
- 事例5:グループホームの不在期間が長い
- 事例6:虚偽報告をして入居したのが発覚した
- 事例7:料金の支払いが滞った
- 事例8:持ち込み不可のものを持ち込むなどルールが守れない
- 事例9:介護度が上がって生活が難しくなった
- 事例10:要介護度が改善した
- 事例11:グループホームが倒産して引継ぎがされない場合
それぞれ見ていきましょう。
事例1:ほかの入居者やスタッフに対する暴言や暴力などの迷惑行為をした
グループホームからの退去勧告で最も多い原因は、認知症などの症状により、暴言や暴力が多く見られるケースです。
ほかの入居者やスタッフの迷惑となる、危害を及ぼすような言動に対し、通常の介護方法では防げないと判断されると、退去事由に該当する可能性があります。
暴言・暴力は主に認知症で見られる症状ですが、ほかに環境の変化やストレスが原因の場合もあります。本人に暴言・暴力などの問題行動が見られたら、認知症とストレスの両面から原因を考える必要があるでしょう。
事例2:共同生活が難しいと判断された
グループホームでの共同生活が難しいと判断された場合に、退去を求められる可能性があります。
暴力や暴言ほど他者に直接危害を及ぼさないとはいえ、徘徊(はいかい)でほかの入居者の部屋に入ったり、大声を上げたりする行為も、施設内の共同生活を営む上ではネックとなるでしょう。
グループホームの入居要件として「共同生活に適応できる」という項目があり、そこに抵触するかどうかがポイントになります。
また、現時点では問題がなかったとしても、将来的に危害を及ぼす恐れがあるとなれば、共同生活を営めないと判断される可能性があります。
トラブルに発展する前に、本人の最近の状況について、施設側と話し合いの場を持つとよいでしょう。
事例3:自傷行為が頻発する
他者を傷つける恐れがある場合のほかに、自分を傷つける行為がたびたび見られるケースも、退去事由になり得ます。
グループホームの入居条件として「自傷・他害の恐れがない」と明記されています。もし自傷行為が見られたとき、グループホームでは身体拘束などの方法で本人の命を守ることができないため、対応が難しいのです。
普段からスタッフとこまめにやり取りし、本人に変わった様子はないか、確認するようにしましょう。
事例4:グループホーム内では医療処置に対応できない
グループホームの退去要件の一つに、本人の状態が変化して医療行為が必要になったケースが挙げられます。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの他施設と違い、グループホームには看護師の配置義務がありません。最近では、医療機関と連携している施設も増えているものの、現実には医療従事者のみが行える医療行為は、グループホーム内で行えないケースが多いです。
なお、常在スタッフである介護士が行える医療行為は通常、体温・血圧などの測定や、薬の内服・貼付の介助などに限られています。
もし本人に継続的な医療的ケアが必要になった場合には、24時間看護師がいる老人ホームなどへの転居を検討する必要があるでしょう。
参照:厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」
事例5:グループホームの不在期間が長い
本人に問題行動がなくても入院などにより、長期にわたりグループホームを空けると、施設から退去を迫られる可能性があります。
退去を勧める基準となる空室期間については、通常ホームごとに決められていますが、おおむね3ヵ月以上とされているようです。
グループホームに限らず、介護施設の入居を待機している方は大勢います。施設側としては、戻れるかはっきりしない方よりも、入居要件に合致していて、入居を待っている方を優先するかもしれません。
契約時に、もし入院してしまっても再入居できるのか、あらかじめ確認しておくことが肝心でしょう。
事例6:虚偽報告をして入居したのが発覚した
グループホームの入居手続きの際に、断られるのを恐れて、虚偽の報告をする方も中にはいるようです。しかし入居後に虚偽申告が発覚すると、退去勧告をされる場合があります。
グループホームの入居要件として、一定の要介護認定基準が定められています。もし共同生活ができないほど重度の認知症である、あるいは持病があるのに偽りの報告をするのは、契約違反とされても仕方ないかもしれません。
仮に入居要件を満たさないとしても、系列の施設を紹介してもらえる場合もありますので、申告は正しく行いましょう。
事例7:料金の支払いが滞った
グループホームの料金支払いが滞った場合、退去勧告の要因になり得ます。
入居後に経済状況が悪化し、料金を支払えなくなる事態もあり得るでしょう。その場合、すぐに退去とはならず、通常1〜2ヵ月は猶予があります。
しかし支払いが3ヵ月以上滞ると、契約上の身元保証人や連帯保証人が支払いを求められたり、強制退去となったりする可能性があります。
支払いが難しいと感じた場合には「高額介護サービス費」などの公的補助制度もあります。事前に確認しておくとよいでしょう。
事例8:持ち込み不可のものを持ち込むなどルールが守れない
老人ホームの入居時に、持ち込んでよいとされる持ち物が定められており、大抵の場合、刃物や火器などは持ち込み禁止になっています。もし禁止されている物を部屋に持ち込んだり、共同生活に必要なルールを守れなかったりすると、退去を求められる可能性があります。
グループホームでは、本人が自宅で使用していた物を比較的多く持ち込めます。しかしルールが守れなければ、共同生活が営めないとみなされるかもしれません。
たとえ本人の愛用している物でも、居室に持ち込んでよいか、あらかじめ確認しましょう。
事例9:介護度が上がって生活が難しくなった
グループホームに入居したあとに介護度が上がった場合、退去を求められるケースがあります。
グループホームは、基本的にスタッフの力を借りながら、自立した生活を送る施設です。ここでのスタッフの仕事は、主に生活サポートであり、重度介護に対応しているわけではありません。
介護度が上がり、スタッフが手伝っても生活が難しくなってしまうと、より重度な介護に対応する施設へ移るよう勧められるでしょう。その場合には、グループホーム側にも協力してもらい、転居先を検討しましょう。
事例10:要介護度が改善した
要介護度が上がると退去の対象となりますが、逆に要介護度が改善した場合にも、退去を促される可能性があります。
グループホームの入居要件は、要支援2以上かつ認知症と定められています。例えば、身体機能や認知症の症状が改善され、要支援1や自立になると入居要件から外れるため、退去を勧められる場合もあるのです。
もしグループホームの入居要件を外れるほど要介護度が改善したのなら、自宅での生活も視野に置いて考えてもよいかもしれません。
事例11:グループホームが倒産して引継ぎがされない場合
老人ホームでも、経営破綻する可能性があります。その場合、施設は閉鎖されてしまうため、転居せざるを得なくなります。自宅での介護が難しい場合、他の施設を探すほかないかもしれません。
ただし老人ホームが倒産しても、通常は次の事業者に運営が引き継がれます。その際には、退去を迫られることはありません。
施設を探すにあたっては、経営が安定している施設を選ぶのも重要です。経営状態を判断する目安として、スタッフの数や質、財務状況などを確認しておくとよいでしょう。
グループホームから追い出されたとき施設に確認したい4つのポイント
ここから、実際にグループホームから退去勧告を受けたときに、施設に確認するべき4つのポイントを紹介します。
- 追い出される理由は正当なものか
- 契約解除の予告期間は何日か
- 入居金の返戻はあるのか
- 居室の原状回復の必要はあるか
これらを知っておけば、もし退去勧告を受けたとしても慌てずに済みます。入居する前に、しっかり押さえておきましょう。
1.追い出される理由は正当なものか
グループホームから退去を求められ、契約条項も改めて確認したけれど、追い出される理由が正当なものと感じられない。そのような場合は、公的な相談機関を利用しましょう。
具体的な相談先としては、役所の高齢者相談窓口、都道府県の国民健康保険団体連合会、社団法人全国有料老人ホーム協会などが適切です。
公的機関であれば、中立的な立場で退去勧告が正当かどうか、的確なアドバイスをしてくれるでしょう。
中には、法的手段を検討する方もいるかもしれませんが、お金も時間もかかってしまい、本人にもよい影響を与えないでしょう。まずは、気軽に相談できる公的機関の利用をおすすめします。
2.契約解除の予告期間は何日か
もし退去の勧告を受けてしまったら、いつまでに退去しなければならないのか、施設に確認する必要があります。
実は、グループホームから退去を促されたとしても、通常すぐに出ていく必要はありません。
施設により異なりますが、施設側から契約解除をするケースでは、退去の準備も考慮して、約90日程度の予告期間を設けているケースがほとんどです。
次の入居先を探すためにも、契約解除の予告期間を確認しておきましょう。同時に、グループホーム側にも入居先を探してもらえるよう、協力を要請しましょう。
3.入居金の返戻はあるのか
予定外の退去を余儀なくされた際には、支払った入居一時金が戻ってくるかどうか確認しましょう。
入居一時金は敷金・保証金の位置づけで、清掃費・修繕費などの名目で清算され、かつ施設ごとのルールにより償却されるものです。
退去日が入居金の償却期間内で、かつ償却されていない分がある場合には、入居一時金の一部が返金される可能性があります。
返金額の計算方法は、契約書類に記載されていますが、施設によって一時金の償却方法・取り扱いは異なります。返金の有無が気にかかる場合は、契約時に確認しておくとよいでしょう。
4.居室の原状回復の必要はあるか
グループホームの退去時には、居室を原状復帰しなければならない場合があります。これはアパートなどの賃貸住宅と同様です。
部屋の損傷が経年劣化によるものは施設負担で修繕します。しかし故意・過失による損傷については、本人負担で原状復帰を行わなければなりません。
ただ多くの場合、経年劣化なのか、本人の過失によるものなのかの境界線があいまいかもしれません。多くの施設は、国土交通省のガイドラインを基準に運営していますので、参考にしてください。
参照:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
グループホームから追い出されたらすぐに起こすべき行動
もしも本当にグループホームから追い出されてしまったら、まず何をするべきでしょうか?
ここから、ホームを退去したら最初に取るべき行動を紹介します。
- 地域包括支援センターに相談する
- 医療機関を受診する
- 別の介護施設を探し始める
グループホームを追われ、失意の中でもすぐに行動が起こせるよう、これから紹介する内容を参考にしてください。
地域包括支援センターに相談する
介護施設を退去させられたら、最初に地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。
地域包括支援センターとは、市区町村が設置する地域の高齢者の総合相談窓口です。介護に限らず、生活相談なども受け付けているため、グループホームを追い出された時の相談窓口として最適といえます。
地域包括支援センターには、福祉・介護の専門家がおり、地域医療や介護と連携しています。現状を相談すれば、第三者的な立場から、今後の方向性について適切なアドバイスが得られるでしょう。
医療機関を受診する
次の入居先を探している間に、本人の精神状態や体調が悪化しないよう、気をつけなければなりません。
退去理由が心や体調の悪化だった場合には、今の状態のままで新しい施設が見つかっても、また同じ理由で退去させられる可能性があります。
そのため、定期的に医療機関を受診しておいた方がよいでしょう。また、認知症の症状が悪化しているのであれば精神科へ、体調の悪化であればそれぞれの専門機関を受診しておきましょう。
別の介護施設を探し始める
今後の方向性が決まり、本人の体調も良好ならば、次の介護施設を探し始めましょう。
施設探しをケアマネジャーに任せきりにする方も多いですが、本人と家族自身で考えて探す方が、より本人に合った施設が見つかるのではないでしょうか。
退去に到った経緯を踏まえ、本当に本人に合っているのはどんな介護施設なのか、じっくり考えながら探しましょう。
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要介護者に寄り添いながらグループホームでの生活を見守っていこう
「家では色々大変だったけれど、グループホームで預かってもらえたから、もう安心してお任せできる」と、ほっとする気持ちはごもっともですが、認知症を患った本人は、今後どのように変化していくか分かりません。
もしかすると認知症の進行や身体機能の低下などで、施設が対応できなくなるかもしれません。そうなれば、グループホームを追い出されてしまう事態も考えられます。
グループホームに入居したから大丈夫と、本人と関係が希薄になるのはよくありません。日頃から本人やスタッフとこまめにコミュニケーションを取ると共に、もしグループホームを追い出されるような事態になっても慌てないよう、この記事を参考に備えておくことが大事です。
グループホームから退去勧告されるケースには、暴力や暴言、迷惑行為などで、共同生活が難しいと判断される場合があります。ほかにも、要介護度や健康状態が変化した場合や、経済的な事情なども挙げられます。退去の要件は、契約書と重要事項説明書に記載されていますので、確認しておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
まず、地域包括支援センターに相談しましょう。専門家が今後の方向性を示してくれます。また、他施設の入居のためにも、本人の健康維持に留意し、落ち着いたら施設探しを始めましょう。詳しくはこちらをご覧ください。