「特別養護老人ホームではどんなスタッフが働いているの?」「人員基準ってどんな意味があるの?」このような疑問をお持ちではありませんか?特別養護老人ホームでは、さまざまな職種のスタッフが働いています。しかし、すぐに頭に思い浮かぶ職種は多くないかもしれません。
この記事では、介護保険法を基に基づいて定められた特別養護老人ホームの人員基準を中心に解説します。働いている職種や人員基準を学ぶと施設を探す手掛かりになるかもしれません。居室のタイプにも触れていますので、施設探しの参考にしてください。
特別養護老人ホームとは?
特別養護老人ホームとは、介護保険法第八条に定められた介護老人福祉施設です。各都道府県の指定を受けて、原則要介護3以上の介護が必要な方を受け入れる場を提供しています。
サービス内容は、主に食事・入浴・排泄・機能訓練等といった基本的な生活に欠かせない介護がメイン。レクリエーションや行事を開催していることが多く、施設によって内容は異なります。積極的にボランティアを募り、利用者が地域の方との繋がりを感じられるようにしている施設もあるようです。
また、有料老人ホームと比べ費用負担が少ないのも大きな魅力です。費用が安いため、入居待ちになる施設も多くあります。そのため、できる限り早い段階で希望する特別養護老人ホームを探すのが大切です。
特養には4種類の居室タイプがある
特別養護老人ホームには、大きく分けて従来型・ユニット型の2種類があります。それぞれの居室タイプによって、設備や人員基準も異なります。
1.ユニット型個室
ユニットとは10名程度の単位で生活する形態のことで、居室が個室となっている場合をユニット型個室と呼びます。食事をしたりくつろいだりするリビングを囲むように居室が配置されており、アットホームな雰囲気で生活できるでしょう。また、従来型個室と同様にプライバシーが保たれやすいです。
睡眠やプライベートな時間は居室で、そのほかの時間はリビングでスタッフやほかの入居者の方と過ごすなど生活のメリハリをつけやすくなっています。
2.多床室(従来型)
多床室は、個室と違い1つの部屋に複数人が生活するタイプです。1部屋4名程で生活するのが一般的で、病院の大部屋のような造りとなっています。従来型個室と比べて居室利用料が安く設定されているのが魅力。個室よりも死角が少ないため、見守りや把握の必要度が高い入居者のケアが手厚く行われやすいといった利点もあります。しかし、その反面プライバシーが保たれにくいのが大きな欠点です。
また、各入居者の生活スペースはカーテンで仕切られているため、陰で動きがわかったり生活音が聞こえやすかったりするのも難点といえるでしょう。
3.従来型個室
従来型個室は、1人で過ごせる個室タイプです。居室の入口がフロアの廊下に接しています。従来型個室はその名の通り個室のため、プライバシーを確保できるのがメリットです。
家族や知り合いの方などが面会に来られた際にも、気兼ねなく過ごせるようになっています。しかしその分、多床室に比べて居室利用料が高く設定されているのが難点といえるでしょう。
4.ユニット型個室的多床室
ユニット型個室的多床室は以前までユニット型準個室と呼ばれていたもので、平成30年3月から厚生労働省の通知によりユニット型個室的多床室と名称変更されました。ユニット型個室同様、10名程度の単位で生活できるタイプです。パーテーション等の生活スペースが区切られていますが、完全な個室ではありません。
しかし、カーテンで仕切られている従来型多床室よりはプライバシーが保たれやすいでしょう。完全な個室ではないので、利用料もユニット型個室よりは低く設定されています。
特養(特別養護老人ホーム)の人員基準
人員基準とは、介護保険法第8条22項・27項、老人福祉法第20条の5にて定められている介護保険サービスを提供するために必要なスタッフの基準です。この基準を満たさないと指定取り消しや、介護報酬の返金等さまざまな処分がくだされてしまいます。
特別養護老人ホームの各職種の人員基準は、以下の通りです。
施設長 | 原則専従で常勤1名。社会福祉主事、福祉経験2年以上などが要件 |
医師 | 入居者に対して健康管理や療養上の指導を行うために必要な数 |
介護職員又は看護職員 | 原則専従で、入居者3名に対して常勤換算1名以上 |
生活相談員 | 入居者100名に対して常勤1名 |
栄養士 | 1名以上 |
機能訓練指導員 | 1名以上。当該特養の他職種との兼務が可能 |
介護支援専門員 | 入居者100名に対して1名 原則専従だが、当該特養他職種との兼務が可能 |
参照:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について
入居者に支障がない限り、機能訓練指導員と介護支援専門員は併設された短期入所生活介護の同職種と兼務が可能となっています。必ずしも専従の方がいるわけではない点に注意が必要です。
ユニット型特養(特別養護老人ホーム)の人員基準
さきほどは、一般的な特別養護老人ホームの人員基準についてみていきました。ここからは、10名ほどの人数で生活するユニット型の特別養護老人ホームの人員基準を紹介します。
ユニット型特別養護老人ホームは、前項で紹介した基準に加え以下の基準が設けられています。
- 各ユニットの入居者の定員は、おおむね10名以下
- 各ユニットごとに常勤のユニットリーダーがそれぞれ1名必要
- 昼間は各ユニットに、常時1名以上の介護職員または看護職員が必要
- 夜間は2ユニットごとに、1名以上の介護職員または看護職員が必要
上記を見てわかる通り、従来型と比較すると人員配置は手厚くなっています。そのため、できる限り手厚いケアを受けたい方はユニット型を選ぶとよいでしょう。
特養(特別養護老人ホーム)で配置されている職種とそれぞれの役割
特別養護老人ホームで働いているスタッフでは、各専門職が連携して入居者の方のケアを日々実践しています。ここでは、特別養護老人ホームで配置が義務づけられている職種の役割や仕事内容を解説します。
- 生活を送るために必要な介助をする介護士
- 幅広い知識をもとに相談に対応する生活相談員
- 医療行為で生活を支える看護師
- 身体機能の維持向上を目指す機能訓練指導員
- かかりつけ医として健康管理を担う医師
上記について、順に詳しく解説していきます。
1.生活を送るために必要な介助をする介護士
介護士は、食事・排泄・入浴介助などといった介護が主な仕事です。ただ介助するのではなく、ケアプランで定められた機能維持向上の視点をもとにした介助を提供。入居者の方の身体状況に変化があれば記録し、チームで共有を行っています。
日々介助を実践するため入居者に最も近い立場で、入居者や家族の相談対応もしています。
2.幅広い知識をもとに相談に対応する生活相談員
生活相談員は、入居者や家族の相談対応や他職種との連絡調整が主な業務です。入居前の施設説明や、契約・重要事項の説明も行っています。
家族の要望や希望を現場の介護士に繋いで改善につなげる役割もあり、施設内での連携には欠かせない大切な職種です。
3.医療行為で生活を支える看護師
看護師は医師と連携し、入居者の健康状態の把握や服薬管理・処置・緊急時の対応などを行うのが主な業務です。医療行為は、医師や看護師等の専門的知識や資格を持った方に限り許されているもの。規制緩和にて一定条件下で介護士が行えるようになったものもありますが、医療行為は未だ看護師の担う部分が大きくなっています。
看護師が日中しかいない施設もあるので、医療行為が必要な方は夜間の配置スタッフに関してよく確認しておくとよいでしょう。
4.身体機能の維持向上を目指す機能訓練指導員
高齢になると身体機能が衰える傾向があるため、心身機能の維持・向上への取り組みが欠かせません。機能訓練指導員は、日々入居者の身体状況を把握して適切な機能訓練を行います。
入居者へ直接機能訓練を実施するだけでなく、日常生活上の動作を行う際にも機能維持向上を図れるよう介護士への指導を行うのも仕事です。機能訓練指導員は、職業名ではなく以下に挙げる資格を持つ方が機能訓練指導員として業務を行います。
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 看護師
- 准看護師
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ師
- はり師
- きゅう師
上記の通り、さまざまな有資格者が機能訓練指導員として働けるのでリハビリの専門職ではない可能性がある点を考慮しておくのが大切です。
5.かかりつけ医として健康管理を担う医師
医師は施設の入居者のかかりつけ医として、看護師や准看護師に指示を出しながら入居者の方の健康管理と療養の指導を行います。体調の変化があった場合には、処方箋の発行や必要な処置を行い健康状態の改善も図ります。
医師の配置により、体調の急変時にも柔軟に対応してもらえるので安心感を持てるでしょう。
特養(特別養護老人ホーム)で人員基準を満たしていないとサービスが停止する可能性も
介護保険法で定められた人員基準を満たさないと、介護施設に処分がくだされるケースもあります。処分がくだされると施設のサービスが停止してしまう可能性もあり、介護施設で生活している方は新たな受け入れ先の確保が必要になります。また、人員基準を満たしていないと入居しても十分なケアが受けられない可能性もあるでしょう。
そのような状況にならないためにも、安心して生活できる特別養護老人ホームに入居できるように施設選びは慎重に行うのが大切です。
人員基準をもとに特養(特別養護老人ホーム)を選ぶ際の注意点
特別養護老人ホームを選ぶ際には食事・入浴・排泄など人手がかかる介助場面で、どのような体制を組んでいるか確認するのも大切です。ここでは、以下2点に絞って選ぶ際の注意点を解説していきます。
- 夜間は基準を下回る人数になる可能性がある
- スタッフは常勤でない可能性がある
上記について、順に詳しくみていきましょう。
夜間は基準を下回る人数になる可能性がある
介護保険上の介護士または看護師の人員基準である3:1は、24時間365日ではなく日勤の勤務帯に適用されます。そのため、夜間は3:1を下回るケア体制になる可能性もあるのです。
これは、夜間には多くの方が眠られており日中よりも人手がかからないことが理由に挙げられます。しかし、夜間でも排泄介助・褥瘡予防のための体位交換などケアが必要となる方も多いでしょう。24時間いつでも十分なケアを受けられるようにしたい場合には、事前に気になる施設へ夜間の人員体制についても聞いておくと安心です。
スタッフは常勤でない可能性がある
また、常勤スタッフと非常勤スタッフの比率を確認するのが大切です。人員基準では常勤となっていても、厳密には常勤換算でのスタッフ配置となっているケースがあるためです。
常勤換算とは、何名かの非常勤職員の合計がフルタイムで働くスタッフの労働時間になればよいといったもの。そのため、施設によっては非常勤スタッフを複数名雇用して人員基準を満たすようにしているケースもあるとされています。
優秀な非常勤スタッフも大勢いますが、勤務時間・日数が短く入居者の状態の経過などを把握しきれていないスタッフがいる可能性もあります。そのため、配置されているスタッフの常勤・非常勤の比率はチェックしておくと安心かもしれません。
特養(特別養護老人ホーム)のICT化で人員配置基準の緩和が検討されている
介護業界は人材難が続いており、ITやAI技術の進歩とともに人員基準の緩和が検討されています。具体的には、センサー・カメラ・インカム等を組み合わせてケア体制作りによって人員基準を緩和させるといった内容です。
技術の進歩で睡眠時間の質や心拍数等さまざまな面を感知できるとしても、やはり最後には人の目が必要です。最新機器に使われるのではなく、使いこなす人材も必要とされます。新しい技術に対しては、猜疑心が生まれるかもしれません。本人が安心して生活できるのかどうか、施設探しの際には人員体制や設備面などよく確認するのが大切です。
特養(特別養護老人ホーム)の人員基準を把握しよう
特別養護老人ホームでは幅広い職種が配置されており、それぞれの役割を果たして入居者の生活を支えています。しかし従来型とユニット型、多床室と個室には違いがあります。
施設によって雰囲気も異なるので、入居を決める前には本人に合うかどうか見学するとよいでしょう。長い時間を過ごす場になるからこそ、人員基準や設備面などをよく確認して安心して過ごせるところを選ぶのが大切です。
介護保険法に定められた、特別養護老人ホームにおける人員配置の最低基準のことです。職種により、基準が異なっています。スタッフの配置基準を満たしていないと、指定の取り消しや効力停止処分がくだされる場合があります。詳しくはこちらをご覧ください。
介護士・看護師・機能訓練指導員・生活相談員・医師などに基準が設けられています。特別養護老人ホームでは利用者の方の生活を支えるために必要な専門職が欠けないよう、基準を設けているのです。詳しくはこちらをご覧ください